インプラント治療

インプラントと歯周病

インプラント周囲炎の治療方法(CISTの分類:1~6)

はじめに

インプラント周囲炎とは、インプラントが歯周病と同じような症状になることです。
インプラント治療後に歯ブラシが不十分になると汚れは歯肉とインプラントの境目から内部に侵入していきます。
後で説明します、歯周ポケットです

この汚れは歯周病細菌と同様の細菌です。
そして初期の段階ではインプラント周囲の歯肉が腫れて行きます。
その後インプラントを支えている歯槽骨を吸収してしまいます。
最終的にはインプラントはダメになり、撤去することになります。
人工物であるインプラントには神経が通っていません。
そのため初期の段階では多くの場合、自覚症状がありません。
そのため、かなり状態が進行しなければ気付かないのが特徴です。

この続きはこちらを御覧下さい。

それではインプラント周囲炎になった場合、インプラントはもうダメなのでしょうか?
摘出しなければ、ならないのでしょうか?
治療方法はないのでしょうか?
以下にその説明をします。

CISTの分類とは?

インプラント周囲炎の治療を説明する前にインプラント周囲炎の分類を解説したいと思います。
それはどんなインプラント周囲炎でも治療できるのではなく、インプラント周囲炎の初期であれば、治療は可能だということです。
そのためにはインプラント周囲炎の分類(インプラント周囲炎の程度)を知ることが必要になります。

現在インプラント周囲炎を分類する方法として『CISTの分類』というものが広く使われています。

私達インプラント専門医はインプラント周囲炎が起った場合、この『CISTの分類』に従い治療を行います。

それでは、この『CISTの分類』について解説する前に『歯周ポケット』について説明したいと思います。
歯周ポケットとは歯肉とインプラントとの境目にある溝です。
通常この溝の深さは約1~2ミリ程度です。
しかし、歯ブラシをしないとインプラントと歯肉の境目から汚れが入り込み、炎症が起ります。
『歯周ポケット』についてちょっとわからない方は先にこちらを御覧になって下さい。
下の図は歯周ポケットの深さを計測している状態になります。

CISTの分類(1~6)と治療方法

CISTの分類(1~6)と治療方法

1 歯周ポケット3mmが以下の場合で 汚れの付着がなく 出血もない場合:
特に治療する必要性はありません。
2 歯周ポケット3mm以下の場合で 汚れの付着がないが、 出血がある場合:
A:
PMTCを行う
『PMTC』とは『 Professional Mechanical Tooth  Cleaning』の略で、
歯科医師や歯科衛生士のように特別に訓練を受けた専門家が器具や
ペースト(フッ素入り歯面清掃剤)を用いて歯面および歯周ポケット
内部に存在している汚れ(細菌)を機械的に除去することを言います。
3 歯周ポケット4~5mmの場合
A:
PMTC
B:
薬液で歯周ポケット内部を洗浄し、
グルコン酸クロルヘキシジンで毎日口洗する。
使用する薬液は0.1~0.2%のグルコン酸クロルヘキシジンが有効
とされています。(商品名:コンクール)
また、0.2%のグルコン酸クロルヘキシジンジェルを歯肉に塗布する
ことも有効とされています。
こうした薬液による口洗を約3週間続けます。
もちろん歯ブラシを徹底して行うことは基本です。
徹底した歯ブラシができないと薬液の効果はありません。
4 歯周ポケット5~6mm程度で 出血がある場合 ただし、骨吸収はない

まず、レントゲンによる検査が必要になります。
レントゲン検査の結果、骨の吸収がない場合には以下の処置を行います。

A:
PMTC
B:
薬液で歯周ポケット内部を洗浄し、
グルコン酸クロルヘキシジンで毎日口洗する。

上記の処置を行い、3週間程度経過したら再度検査を行い、問題がないか
確認する。問題があれば、次の5の治療に以降する可能性があります。

参考文献:

掲載論文:
Clin Oral Implants Res(1992年)
研究者 :
Mombelli
5 歯周ポケット5mm以上で 出血がある場合 さらに、骨吸収がある場合(2mm以下)

まず、レントゲンによる検査が必要になります。
レントゲン検査の結果、骨の吸収が2mm以下であれば、以下の処置を行い
ます。
骨の吸収が起っているということは大きな問題です。
早急に対応しないと問題が広がり、インプラントを摘出する可能性があり
ます。

A:
PMTC
B:
薬液で歯周ポケット内部を洗浄し、
グルコン酸クロルヘキシジンで毎日口洗する。
C:
全身的あるいは歯周ポケット内部への抗生剤の使用

抗生剤を服用します。
また同時に歯周病ポケット内部にも抗生剤の軟膏を入れます。
約10日間続けます。
抗生剤の種類については論文学的には
オルニダゾール(1000mg×1)もしくはメトロニタゾール(250mg
×3)を10日間、あるいはアモキシシリン(375mg×3)とメトロニ
タゾール(250mg×3)の組み合わせが効果があるとされています。
* しかし、日本では一般的に処方する薬ではないので、使用する薬は医
院により違うことがあります。

参考文献:

掲載論文:
Clin Oral Implants Res(2001年)
研究者 :
Mombelli

上記のようなことを行い、改善しない場合には以下の治療を行う必要性があります。

6 歯周ポケット5mm以上で 出血がある場合 さらに、骨吸収がある場合(2mm以上)

レントゲン検査の結果、骨の吸収が2mm以上であれば、以下の処置を行い
ます。
2mm以上の骨吸収は大きな問題です。
早急の対応が必要です。
場合により摘出する可能性があります。

A:
PMTC
B:
薬液で歯周ポケット内部を洗浄し、
グルコン酸クロルヘキシジンで毎日口洗する。
C:
全身的あるいは歯周ポケット内部への抗生剤の使用
D:
外科処置を行う
骨の吸収が著しい場合には外科処置を行う必要性があります。
外科処置とは麻酔をし、歯肉を切開し、内部の汚れを取り除きます。
この時大切なのはインプラント本体をチタン以外の金属で触れないと
いうことです。
インプラント自体は純チタンでできています。
これは純チタンが骨と結合(くっつく)唯一の材質なのです。
そのため、純チタン以外の金属がインプラント本体に触れるとインプ
ラント表面にその金属の一部が付着する可能性があります。
もし、インプラント表面にチタン以外の金属が触れると後に骨と結合
(くっつく)しない可能性があります。
十分注意しなければ、ならないことです。

インプラント周囲炎の治療後には

上記のようなCISTの分類(1~6)によりインプラント周囲炎の治療を行った後には必ず、再度、歯周ポケットの検査やレントゲン検査を行う必要性があります。
再検査の結果、問題がなければ、その後メインテナンス(SPT)を行うことになります。
ここで問題なのはインプラント周囲の骨の吸収が止まり、回復するかということですが、
感染の状態によりだいぶ違います。
天然歯の歯周病では原因細菌を除去すると歯周囲の組織は回復します。
状態によっては骨が回復することも可能です。
これは天然歯だからです。
感染原因の汚れが取れれば、生体の力で自然に回復します。
しかし、インプラントの場合、もともとは異物ですから、感染が起ると異物反応を起こし、インプラントを排除する作用が起ります。
先程のCISTの分類5や6の状態になると感染がどこまで取り除けたかにより治るかどうかが変わります。
インプラント表面に感染した汚れが取れないと骨の吸収は治まらず、さらに進行します。
そのため、一度インプラント周囲炎になった場合には『CISTの分類』による治療が終わった後も定期的にレントゲン撮影を行う等、経過を観察することが必要です。

インプラント周囲炎の治療後

もしインプラント周囲炎が治らなかったら! ダメになったら!

インプラント周囲炎を『CISTの分類』により治療を行っても、治らなかったらどうなるのでしょう?

基本的にはインプラントを摘出する必要性があります。
骨の吸収が止まらない場合、そのまま放置しておいても良いことはありません。
そればかりか、インプラント周囲炎を放置すると骨吸収が進むため、後の治療が困難になります。
つまり、最終的にインプラントを摘出した後の治療です。
もし、インプラントを摘出した後に再度インプラントを行うのであれば、骨があまり吸収していない段階で行うことが必要です。
骨が吸収してしまった後でインプラントを摘出すると新たにインプラントを行うことが困難になります。
骨を再生する治療法(GBR法)を行うことが必要になります。
再度インプラントを行うことが難しくなるため、腫れや治療期間が長くなる等の治療による大変さあります。
もし、インプラント周囲炎になり、治る可能性が低い場合には早急に摘出することが大切です。
早い段階であれば、インプラントを摘出し、一定期間待ちます。
骨の吸収がさほどなければ、再度インプラントを行うことは難しいものではありません。
インプラント周囲炎になったら早期の治療と的確な判断が必要になります。
下の写真はインプラント周囲炎になってしまった症例です。(写真2、3)
右下のインプラント(手前のインプラントの方)がインプラント周囲炎になっています。
赤線が本来の骨の位置で、緑の線が吸収してしまった現在の骨の位置です。
細菌感染により、骨がかなり吸収してしまった状態が分かるかと思います。
CISTの分類6です。
こうなるとインプラントを摘出しなければなりません。
インプラント治療後も定期的に管理を行うことが大切です。

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