リアルタイムPCR法:細菌検査によるインプラントのリスク診査開始!

はじめに

インプラント治療を行う際にはほとんどの場合、歯周病の検査も行います。
インプラントも天然歯と同様に歯周病になるからです。
インプラントが歯周病になった状態をインプラント周囲炎と言います。
また、歯周病患者様におけるインプラント治療のリスクについてもホームページのさまざまなところで書いてきました。

しかし、最も大切なのは歯周病にならないということです。
そのためには歯周病の予防が必要になります。
歯周病の予防というと『歯ブラシをきちんとする』ということが考えられますが、患者様の中には『歯ぶらしはきちんとしていたのに…』と思われる方もいらっしゃるかと思います。

現実的には歯周病になりやすい人となりにくい人がいます。
どこに違いがあるのでしょうか?

歯周病の根本的な原因の一つとして口腔内の汚れ、つまり、ブラッシングが適切にできていないことが挙げられます。
しかし、歯周病になりやすい方はいらしゃいます。
その一つが歯周病細菌の存在です。

リアルタイムPCR法は口腔内の細菌を調べることで、患者様の歯周病(虫歯)のリクス(将来)を予測することができる検査法です。
『毎日一生懸命歯ブラシをしているのに虫歯や歯周病になりやすい…』
『どんどんと歯がなくなっていく…』
『毎年、治療をしている!』
『一度治療したところがまた…』
『歯周病の治療をしたのに再発した…』
『歯が弱いのは遺伝のせい?』
『将来、歯周病にならないかと心配だ!』
『私は歯周病のリスクが高いの?』
等のご心配の方、口腔内の細菌検査をされることをお勧めします。

口腔内の細菌を科学的に調べることにより、患者様個人に合わせた歯周病や虫歯のリスクを判定することができます。
細菌検査の結果、もし、リスクが高いと判定された場合、リスクの度合いに合わせた予防方法を行う必要性があります。

虫歯や歯周病は細菌感染であることをきちんと理解する!

虫歯や歯周病は口腔内の細菌による『感染症』であることがさまざまな研究により判っています。
虫歯は 『Streptococcus mutans』等の細菌、歯周病は『Porphyromonas gingivalis』等の細菌がその代表的な口腔内細菌です。(細菌の種類やその詳細については後で詳しく解説します)

また、こうした細菌の感染経路も明らかにされています。
虫歯の細菌は、2歳前後に母親から子供に感染するとされています。
細菌の量(数)や質には個人差があり、あらかじめ、上記のような細菌が多いと判明した場合には、それなりの対応が必要になります。

例えば、母親がStreptococcus mutans等の虫歯細菌が多いと判明した場合には、子供が2歳になる前に母親の細菌数を減らす(除菌する)ことをしておけば、子供には『悪い細菌』が感染しにくいということになります。
『悪い細菌』が感染した場合には子供の将来は大変なこととなるでしょう!

虫歯が多いということは、何度も歯科医院に通院しなければ、ならず、時間も治療費も大変になります。
虫歯が深ければ、神経を取る治療も行わなければなりません。
また虫歯治療箇所が多い状態で大人になれば、さらに問題は拡大し、歯を失うことにもなります。

歯周病もそうです。
例えば、若い方に見られる歯周病(以前は若年性の歯周病とも言われていました)の原因菌とされているA a菌( Actinobacillus actinomycetemcomitans:現在はHaemophilus actinomycetemcomitansに名称が変更されました。)は大人から大人へと感染することはなく、まだ永久歯が生えそろわない、10歳程度の時期に大人から子供へ感染することが最近の研究により報告されています。

つまり感染した場合、小さい時にすでに将来的に歯周病になることが分かっているのです。
歯がなくなれば、当然噛めなくなりますし、胃への負担も大きくなり、全身的な問題も増えていきます。
歯がほとんどなくなれば、総入れ歯です。
総入れ歯では噛めず、悩んでいる方は多くいらっしゃいます。
大変ですよね。

歯が悪いと一生悩み事がついてきます。
『歯が丈夫な人はうらやましい!』となっているかもしれません。
しかし、本当は十分予防できたのです。
虫歯も歯周病も…

『ああ、細菌感染しなければ…』
『こんなふうにならかなったのに…』
後で考えても遅いのです。
虫歯、歯周病のリスクが分かっていれば、それなりの対処法があったのです!
まず、虫歯や歯周病は細菌感染で起ることを理解して下さい。
そしてリスクが高い方はそれなりの対処法が必要なのです。

虫歯の感染についての詳細、歯周病の感染についての詳細、インプラント後の歯周病の感染(インプラント周囲炎)については下記参考リンクを御覧になって下さい。

歯垢(プラーク)中の細菌

リスクの高い歯周病とは?(おそろしい侵襲性歯周炎!インプラント周囲炎!)

当医院は歯周病とインプラントの専門医(日本歯周病学会歯周病専門医、国際インプラント学会認定医)です。
そのため、治療の基本は歯周病治療になるのですが、通常の歯周病の治療を行っても治らないことがあります。
『難治性の歯周炎』です。
具体的な例では、歯周病の治療を判断するのに歯周病ポケット検査というものがあります。
歯周ポケット検査についてお分かりにならない方は先にこちらを御覧になって下さい。

それでは、歯周病ポケットについてお分かりになったことを前提として先に進みます。
歯周病ポケットが深いということは内部に歯周病細菌が侵入してしまったということです。
歯周病の治療というのは歯周病ポケット内部に入ってしまった細菌(細菌と歯石)を取り除くことです。
この治療を『ルートプレーニング』と言います。
歯周細菌除去療法です。
ほとんどの場合、歯周病ポケットが6ミリ以下であれば、この『ルートプレーニング』で2~3ミリ程度まで回復します。(ただし、徹底したブラッシングと体調管理ができて、禁煙者であることが前提になります)
しかし、この回復は全ての症例に起るわけではありません。
治らないケースもあります。
これが『難治性の歯周炎』です。

特にA a菌(Actinobacillus actinomycetemcomitans:現在はHaemophilus actinomycetemcomitansに名称が変更されました。) による感染が大きいと細菌検査により診断された場合は『侵襲性歯周炎』と診断され、治療は先程の『ルートプレーニング』だけでは治らないことがあります。
『ルートプレーニング』を行い、歯周ポケット内部の細菌(細菌と歯石)を除去しても治らない理由として、A a菌(Actinobacillus actinomycetemcomitans:現在はHaemophilus actinomycetemcomitansに名称が変更されました。)は歯周ポケット内部以外の歯肉の中(歯肉結合組織)にまで侵入してしまっているからです。
そのため、いくら歯周ポケット内部の細菌((細菌と歯石)を取り除いても歯肉の内部に存在するA a菌(現在はHaemophilus actinomycetemcomitansに名称が変更されました。)により再度感染してしまいます。

つまり、いくら細菌(細菌と歯石)を取っても、新たに感染してしまい、結果的に治らないということです。
今回の話とはちょっとズレますが、歯周病の治療を行っても完全に細菌が取り除けないような歯は『抜歯』する必要性があります。
患者様にとっては抜歯することは抵抗があることで、できるかぎり抜歯を避けたいと考えている方も多くいらっしゃいます。

しかし、これは非常に危険なことです。
歯周病の治療をしても感染が取り除けない歯をそのままにしておくと他の歯にも感染します。
必ず感染します!
そのため、他の歯の歯周病治療を行っても新たに感染してしまい、治療の効果は表れません。
抜歯することは、患者様にとっては嫌なことですが、徹底した歯周病の治療を行っても治らない歯を放置すると現在問題のない歯でも歯周病になってしまいます。
いくら歯周病の専門医であっても全ての歯周病の歯を治せるわけではありません。
逆に歯周病の専門医の治療とは将来性をふまえた治療が行えるということです。
無理に歯を残すことが逆にリスクが高いと診断された場合、将来性を考え、抜歯になることもあります。
歯が多くない方は、歯周病細菌の感染がずっとある状態が長かったため、歯を失ったのです。
口腔内の歯周病細菌の感染をなくすことが歯周病治療にとって最も大切なのです。
ただし、歯周病の進行が非常に進行している方が全て『難治性歯周炎』ということではありません。
歯がグラグラするような歯周病であっても細菌検査をすると歯周病細菌があまり検出されない場合もあります。
このような歯周病は通常の歯周病治療で十分治ります。

しかし、先程書きましたようにA a菌(Actinobacillus actinomycetemcomitans:現在はHaemophilus actinomycetemcomitansに名称が変更されました。)等が多い場合には、通常の歯周病治療では対応できないことがあります。
細菌検査により、リスクが高い(細菌が多い)と診断された場合は通常の歯周病治療以外の対応が必要になります。

歯周ポケットの進行

歯周病細菌とは?その種類について

ここでは歯周病細菌の種類とその性質について解説します。
かなり難しい話しですので、かなりな『歯科マニア』以外の方はこの項目を飛ばして次の項目から御覧下さい。
歯周病細菌検査で調べる細菌は以下のものがあります。

1. A a菌 : Actinobacillus actinomycetemcomitans

現在はHaemophilus actinomycetemcomitansに名称が変更されました。)
グラム陰性通性嫌気性桿菌侵襲性歯周炎の病巣から比較的高率に検出されます。
健康な方からはあまり検出されません。
若年者で重度の歯周病の場合、歯周病ポケットからこの細菌が効率に検出されます。
若年者で部分的に歯周病が進行した患者様から検出されたため、以前はA a菌が検出された若年者を『限局型若年性歯周炎』と言っていました。
高度に検出された場合、通常の歯周病治療と併用して薬物療法が選択されます。

2. P g菌 : Porphyromonas gingivalis

グラム陰性嫌気性短桿菌黒色色素産生性バクテロイデス属です。
血液中で繁殖すると黒っぽく見えることからこのような名前になっています。
歯肉の中にある歯石が黒っぽいのはこのためです。
重度の歯周病(侵襲性歯周炎)から検出されます。
重度歯周病の診断に最も重要な細菌の一つです。
逆に健康な状態のポケットからは検出されることはありません。

3. P i 菌 : Prevotella intermedia

グラム陰性 嫌気性 短桿菌
P G菌と同様に黒色色素産生性バクテロイデス属です。
P G菌と一緒に分離され、単独に存在することは稀です。
歯肉炎(軽度の歯周病)や健康な歯肉のヒトの半数以上に存在しています。
思春期性歯肉炎や妊娠性歯肉炎ではこの細菌が増加します。

4. T f 菌 : Tannerella forsythus ( Bacteroides forsythus )

グラム陰性 嫌気性 紡錘状菌 歯周病組織の破壊が激しい部位で高率に検出されます。
特に歯周ポケットの浅い部分よりは深い部分で検出されることが多い菌です。
難治性歯周炎症の指標として重要な菌種です。

5. T f 菌 : Treponema denticola (スピロヘータ)

グラム陰性嫌気性らせん菌歯周病に対するスピロヘータの役割についてはまた完全には分かっていませんが、最も頻繁に検出されるT d菌についてはかなり研究が進んでおり、歯周病の活動度や重症度と関連しています。
またこの菌が免疫抑制作用に関わっているという報告もあります。
T d菌が多いと歯周病治療後にも再発するリスクが高いとの報告もあります。

6. F n 菌 : Fusobacterium nucleatum

グラム陰性嫌気性紡錘状菌ヒトの口腔内に常在する菌です。
食べかす(プラーク)の内部に含まれており、他の細菌とともにバイオフィルムを形成します。
また、糖分解能がなく悪臭(口臭)の原因となる酪酸を産生します。

上記6種の細菌が主な歯周病に関連する菌です。
ここで、グラム陰性嫌気性桿菌が多いのに気づかれたと思います。
『嫌気性』とは『酸素の無いところを好む』細菌のことです。
この菌種は細胞壁に内毒素(エンドトキシン)であるリポ多糖(リポポリサッカライド=LPS) を含んでいます。
簡単に言うと、『内毒素』は急性炎症や骨吸収に関与しています。
歯周病で骨が吸収するのは『嫌気性菌』が原因だったのです。
そのため、A a菌やP g菌を検査することは歯周病の診断にとって重要であるとされています。

ちなみに、歯周病のハイリスクの基準値(University of California)とは
A a菌が 0.01%以上、
P i 菌が 5%以上
P g菌が 0.5%以上
とされています。
歯周病をご心配の方は調べてみてはどうでしょう?
数字で表されるため、簡単に分かります。

リアルタイムPCR法とは

さていよいよ本題です。
先程、嫌気性菌(酸素の無いところを好む)が、歯周病の原因であったことを解説しました。
しかし、以前はこの『嫌気性菌』を採取するのが非常に困難でした。
現在では、PCR法と言われる検査により、可能となりました。
『 PCR法 』とは、『 Polymerase Chain Reaction 』の頭文字をとったもので、日本語では『 ポリメラーゼ連鎖反応 』と言います。 方法を簡単に説明します。

1. 患者様の唾液を採取もしくは歯周ポケット内部の細菌をペーパーポイントにて採取します。
病院で行う作業はこれだけです。
後は、検査会社に委託します。

2. 採取した菌体から『DNA』を抽出します。
※ 『 DNA 』抽出とは、唾液中の菌体(死骸でも可)から遺伝子(DNA)を取る作業のことです。
簡単に言うと菌の殻から中身を取り出すことです。

3. 菌数を定量的に検出
総口腔内菌数に対する目的菌の存在比を算出
検査の結果が出るまでには7~10日ほどかかります。

次にPCR法を応用した歯周病治療の実際についてです。
PCR法によりA a菌が0.01%以上、P i 菌が5%以上、P g菌が0.5%以上検出され、『難治性歯周炎』や『侵襲性歯周炎』と診断された場合の治療法です。
先にも書きましたが、通常、歯周病の初期治療は、『ルートプレーニング』と言われる治療を行います。
歯周ポケット内部に侵入した歯石や歯周病細菌の除去です。

通常、中程度の歯周病であれば、この『ルートプレーニング』で治りますが、A a菌が0.01%以上、P g菌が0.5%以上存在するような『侵襲性歯周炎』の場合、歯周ポケット内部の細菌を除去しても、歯肉の内部に深く浸透しているため、機械的に除去するだけでは完全に除菌できない可能性があります。

『ルートプレーニング』を行っても、また新たに細菌の感染が起るためです。
この繰り返しのため、完全な除菌が困難になっているのです。
そのため、『ルートプレーニング』と同時に抗生剤を服用し、歯周病ポケット内部の除菌(ルートプレーニング)と生体内部の細菌(歯肉の内部に潜んだ細菌)の除菌を同時に行うことが必要になります。
そのための診断としてPCR法により細菌の種類や数を正確に判断することが必要なのです。

現在、A a菌(:現在はHaemophilus actinomycetemcomitansに名称が変更されました。)、Pg菌に対しては『ルートプレーニング』と同時に『アジスロマイシン』という抗生剤を服用することが有効とされています。
つまり、『PCR法』を応用した『侵襲性歯周炎』の治療とは細菌検査により、A a菌(:現在はHaemophilus actinomycetemcomitansに名称が変更されました。)、P g菌の存在を確認した場合に抗生剤(アジスロマイシン)を服用しながら『ルートプレーニング』を行い、歯周ポケット内部と生体内部の両方から歯周病細菌を除菌する治療法なのです。

この治療の詳細は『歯周病患者様におけるインプラント治療:フルマウスSRP法』を参考にして下さい。
また、リアルタイムPCR法(細菌検査によるリスク診断)は歯周病だけではなく、虫歯の診断にも効果を発揮します。
虫歯の原因菌であるミュータンス菌(mutans 菌)は赤ちゃんの口腔内には存在しないことが確認されています。

赤ちゃんの歯が生え始めた頃(1~2歳前後)に、母親から子供へ感染することが分かっています。
これは、母親が赤ちゃんと同じスプーン等を使用して食事をすることにより感染するのです。
逆に言えば、母親が注意すれば、感染は十分防げるのです。
また、母親にミュータンス菌(mutans 菌)が多いと診断された場合には、除菌を徹底して行うことにより感染は防げるのです。
ミュータンス菌(mutans 菌)を除菌する方法には『3DS法』という治療方法があります。
3DS法とは、Dental Drug Delivery Systemの略です。

リアルタイムPCR法により、ミュータンス菌(mutans 菌)等の虫歯菌の検査を行います。
検査の結果、ミュータンス菌(mutans 菌)が多いと判定された場合、以下の方法で除菌を行います。

1. まず、徹底して虫歯の治療を行います。
虫歯はミュータンス菌(mutans 菌)の住家です。
虫歯があっては除菌療法を行っても効果がありませんので、まず、徹底して虫歯の治療を行います。

2. 次に口腔内のクリーニングをします。
これは『PMTC』と言われるものです。
このPMTCを行わないとこの後の『3DS法』の効果はなくなります。

3. 次に歯の型を取り、リテーナーというマウスピースのようなものを作製します。
この『リテーナー』に専用の虫歯予防薬のフッ素を入れ、5分間そのままにします。
つまり、フッ素を5分間、歯に浸透させるのです。

4. ご家庭でもこの方法を1日2回(朝、夜の歯ブラシの後)、『リテーナー』にフッ素を入れ、除菌します。

5. 数週間し、再度PCR法により、細菌の状態を確認します。
このように『リアルタイムPCR法』は虫歯や歯周病の予防に科学的根拠をもって対応することができます。

リアルタイムPCR法

PCR法の欠点

PCR法を歯科治療の前に行えば、的確な診断により個人個人に合わせた予防方法(リスク診断)が分かりますので、母親からの感染が少なくなり、結果的に子供の虫歯は激減します。
もちろん将来、歯周病になるリスクが分かりますので、歯周病も激減します。
また、通常の治療では難しかった『難治性歯周炎』の治療も科学的根拠をもって行えます。
しかし実際には、歯科治療において細菌検査はまったく普及していません。
その最大の理由が保険診療の考え方にあるからです。
日本の保険医療は病気になった後の治療を目的として作られています。
病気にならないための、保険医療ではないからです。
つまり、予防は病気ではないので、保険診療の適応外なのです。
そのため、PCR法による細菌検査も保険適応外となります。
また、歯周病の初期治療である『ルートプレーニング』を行いながらの抗生剤の投与も禁止されています。

A a菌やP g菌が大量に関与している『侵襲性歯周炎』等の治療には『ルートプレーニング』と同時に抗生剤の投与を行うことは、効果がある治療で科学的に証明されているのになぜか保険診療には反映されていません。
今後もそうした治療方法は保険に適応されることはまずないでしょう。

その理由はいくつかあります。
一つは細菌検査を保険診療に入れると医療費が高くなることです。
しかし、これはおかしなことです。
病気を治すことが医療の目的ですし、もし、虫歯や歯周病が激減すれば、医療費はかなり抑えられるはずです。
そのための予防法に重点をおかなければ、医療費の削減だって無理です。
これは歯科以外の医科の分野ではもっと大きな問題となっています。
医療費は年々増加をする一方で、その財源を確保するのが難しくなっています。

なぜ、これほど医療費が莫大の増加しているのか?
いろいろな要因があるかと思いますが、単純に言えば、病気が多いからです。
糖尿病、高血圧等、生活習慣を改善すれば、病気は減ります。
病気を治すための、治療も大切ですが、予防を重点とした医療に変えていかないと医療費の削減もそうですが、国民の健康を本当の意味で守ることにはなりません。
当院は歯周病、インプラントの専門医ですから、ほとんどの患者様は重度の歯周病やインプラント治療を希望される方です。
その内の大半の患者様はずーっと歯科治療を受けてきました。
しかし、ずーっと歯科治療を受けてきたにもかかわらず、歯はどんどんと無くなり、困って来院されます。
歯科治療は受けてきたが、予防は受けていなかったのです。

こうしたことは医療サイドにも大きく問題がありました。
日本の保険医療は出来高制です。
つまり、どれだけ、治療したかが、その医院の収入につながっていきます。
治療をしなければ、病院は利益がないのです。

以前は病院に行くと大量の薬をもらってくるというようなことがありました。
血圧の薬、コレステロールの薬…等 毎日いっぱい薬を飲んでいる方がいました。
しかし、根本的な予防をもっともっと、医療サイドが徹底して行えば、こうした処方も減るはずです。

歯科医院もそうです。
歯を削らないと利益になりません。
予防は日本の保険診療にはありませんので、いくら予防の話をしても歯科医院の利益にはまったくなりません。
そのため、細菌検査や予防を保険以外(自費診療)で行って、虫歯の治療や歯周病の治療を行った場合、混合診療とみなされ、場合により、保険医を剥奪されます。

保険医を剥奪された場合、保険診療の収入は無くなり、病院はつぶれるでしょう。
ですから、歯科医院自体も予防に手を出せずにいたことも確かです。
矛盾だらけの日本の保険医療ですが、それでも良い点もいっぱいあります。
なくなっては困ります。

あまり愚痴を言っていても始まりません。
現在、歯科の予防はある程度可能になっています。
ご自身の口腔内を守るものはご自身です。
リアルタイムPCR法(細菌検査によるリスク診断)はご自身の健康を守る一つの検査法です。
ご興味のある方は是非受けられて下さい。

ただし、先程書きましたように保険診療では認められていませんので、自費診療になります。
また、それに付随した治療も保険診療の適応外になることもありますので、治療前に担当歯科医師に聞いてみて下さい。
検査方法は唾液を採取したり、歯周ポケット内部の汚れを採取する簡単なものです。
どこの歯科医院でも行える検査方法です。

ただし、歯科医院によっては予防を行っていなかったり、検査を行う会社と提携していない場合もあります。
受診される前にあらかじめ、問い合わせてみることが必要です。

リアルタイムPCR法(細菌検査によるリスク診断)は検査する菌の数にもよりますが、1回15,000~20,000円になります。
これは、検査会社に細菌検査の分析を依頼するだけで、同じ程度の費用がかかります。

病院の利益を考えれば、もっと高い設定を行っていても当然かと思いますが、私の知っている限りではこうしたリアルタイムPCR法を行っている歯科医院はほとんど無償で検査費用のみといったところが多いです。

リアルタイムPCR法(細菌検査によるリスク診断)を行っている歯科医院はまじめな歯科医院だと思いますね。
できるかぎり歯を削らず、予防にがんばっているのですから…

ちなみに当院では希望のある患者様のみに行っています。
通常の治療で必要のない方には行いません。
先程の混合診療にもあたり、問題が出てしまうためです。
難しい話ですね。

歯科検査報告書