インプラント治療

インプラント専門分野

抗生物質:その1

はじめに

歯科で処方する薬の多くは鎮痛剤抗生物質(antibiotics)です。
はじめに『抗生物質とはなにか?』という話からしたいと思います。

本では、『抗生物質』のことを『カビや放線菌などの微生物によって作られる化学物質で、他の微生物の発育を阻害したり、死滅させる有機物質』となっています。

また、化学的に合成された物質も一般的には『抗生物質』と言いますが、厳密には『抗菌薬(合成抗菌薬)』と言います。

難しく書くと分かりづらいですね。

『抗生物質』という言葉はもちろん聞いたことがあると思います。

そして、ほとんどの方が『抗生物質』を使用(服用)したことがあると思います。

例えば、歯科医院では抜歯や歯肉が腫れた時に処方されます。
『なんで、抗生物質を飲むの?』
と思われた方もいらっしゃるかと思います。

抗生物質は知ってはいるけれど、本当はどんなものなのか?

バイ菌(細菌)を殺すもの?

風邪の時に飲むもの?

風邪はバイキン(細菌)?

毎年流行する風邪は『ウイルス』じゃなかったっけ?

ばい菌(細菌) も ウィルスも同じもの?

そもそも、ばい菌と細菌は同じもの?

誰もが一度は服用したことがある『抗生物質』
分かっているようで分かっていない『抗生物質』

この項目ではそんな話をしたいと思います。

抗生物質の歴史

『ペニシリン』って知っていますか?
このような歯科のホームページを見ようと思われている方ですからおそらく知っていると思います。
『ビートルズ』ほどではないですが、かなり有名ですよね。

『ペニシリン』はイギリスの医学者であるフレミング(Alexander Fleming)が
1929年に世界で始めて発見した抗生物質です。

有名な人なのでご存知の方も多いかと思います。

フレミングは青カビ(微生物)から偶然この『ペニシリン』を発見しました。

この『偶然』についてお話したいと思います。

細菌学者であるフレミングはブドウ球菌(病原菌)を増やす研究をしていました。

ある時、フレミングは妙なこと発見しました。

研究のため、増やしていたブドウ球菌(病原菌)が一部分のみ増えていないことが分かりました。

ブドウ球菌(病原菌)が増殖していない部分をよく観察するとそこには青カビがあったのです。

つまり、青カビの周囲にはブドウ球菌(病原菌)は繁殖していないことを発見したのです。

そして、この青カビにはブドウ球菌(病原菌)を増殖させない成分があったのです。

この偶然の発見をもとにして人類史上始めての薬、『抗生物質』が誕生したのです。

もう少し詳しく解説するとペニシリンは、青カビの一種Penicillium属から単離された『抗生物質』のことです。

発見というものはこういう意外なところから見つかるものです。

これは、20世紀最大の発見と言われています。
その功績からフレミングは1945年にノーベル医学・生理学賞を受賞しています。

『抗生物質』が発見される前まで人の死亡原因として『コレラ』『赤痢(せきり)』
『結核』などの感染症が非常に多くありました。

しかし、フレミングの発見した『ペニシリン』以降、多くの抗生物質が開発されてきました。

例えば、『ストレプトマイシン』という抗生物質の発見により、結核で死亡する人は劇的に少なくなりました。

その後さまざまな『抗生物質』の発見により、感染症で亡くなる人は少なくなっています。

『抗生物質』は人間の歴史の中で突如現れた『魔法のような薬』だったのです。

抗生物質は細菌に対してなぜ効果があるのか?

『抗生物質』は、感染症に非常に効果があり、細菌を殺菌する効果があることを先にお話しました。

それでは、細菌を殺すほどの強い効果がある『抗生物質』は人体に影響はないのでしょうか?

細菌が死滅してしまうほどの薬ですから…
それを飲むのですから…
人に影響がまったくないなんて…
と 思う方が普通だと思います。

私自身も大学に入り、細菌学や薬理学について勉強するまではそう思っていました。
薬はあまり好きではなかったのです。
同じような思いを持っていらっしゃる方も多いと思います。
そうした方に見ていただきたい話です。

最初に難しい話になりますが、『抗生物質』が人間の身体に影響せず、細菌のみを死滅させることとして『選択毒性』という作用があります。

難しい言葉ですね。
ちょっと我慢して下さい。
『選択毒性』とは、
『化合物が宿主には毒作用を及ぼさず、寄生異物にだけ選択的に毒作用を及ぼす性質』となっています。

難しい言葉なのでなんだか分かりません。

できるかぎり分かりやすくお話します。
(以下はわかりやすく説明するための例え話です)

それでは、細菌と人間そして『抗生物質』の話の始まりです。

人間の身体 と 細菌は身体 の作りは違うのです。
細菌は身体が“弱い”と思って下さい。

身体が弱いものですから外敵から身体を守るために、『鎧(よろい)』をまとっています。
『モビルスーツ』ですね。

ヤリがきても石を投げられても大丈夫なような鎧(よろい)です。

細菌は身体をがっちりと防護しているのです。

それに対し、人間は細菌に比べると多少身体が“強い”ため、通常はそのような鎧(よろい)は必要ありません。(*注 例えです)

細菌がもっている鎧(よろい)のことを『細胞壁』と言います。
鎧(よろい)とは細菌だけが持っている秘密兵器なのです。

細菌はすごいなー

しかし、この秘密兵器である『細胞壁』がアダになってしまうのです。

ここから、『抗生物質』の登場です。

実は、『抗生物質』は『細胞壁』だけを攻撃する性質があるのです。

細菌にとってはたまったものではありません。
抗生物質により、細菌の細胞壁はことごとく壊されてしまいます。
鎧(よろい)という細胞壁を壊されてしまった細菌は丸裸です。
細菌はもともと弱いため、鎧(よろい)がないと生きていけません。

ついに、細菌は死んでしまったのです。

しかし、人間はこの細胞壁を持っていないため、『抗生物質』の攻撃は受けなかったのです。
『抗生物質』は細菌にとっては“敵” ですが、人間にとってはなんでもないのです。

これが、おおまかな『抗生物質』の一つの働きです。

『抗生物質』が細菌には悪いが、人間には問題がない理由が少し分かっていただけたと思います。

ただし、これは『抗生物質』の一部の働きです。
『抗生物質』は、細胞壁を攻撃するだけでなく、他にも働きがあります。
その他の働きについてはまた後で解説します。

しかし、話はこれでは終わらなかったのです。

『抗生物質』自体も人間を攻撃していくのです。

それが、副作用です。

また、耐性菌の話です。
怖いです。

細菌の進化と抗生物質

前項では『抗生物質』の一つの働きとして『細菌の細胞壁』を攻撃することにより、細菌を死滅させることをお話しました。

しかし、細菌もこのまま黙って攻撃されているだけではいきません。

鎧(よろい)を強化してきます。

細菌は『抗生物質』に攻撃されても壊れない鎧(よろい)を開発します。

これにより、細胞壁は壊されなくなります。
ニュー(NEW)細菌の誕生です。

しかし、『抗生物質』もだまってはいません。

ニュー(NEW)『抗生物質』の誕生です。

強化された『抗生物質』は、『ニュー鎧(よろい)』も破壊してしまいます。

すごいです。

ニュー(NEW)『抗生物質』により、ニュー(NEW)細菌はあっけなく死滅しまったのです。

残念!

しかし、戦いはこれで終わったわけではありません。

細菌はまたあたらたに強化して復活します。
ニューニュー(NEW NEW)細菌の誕生です。

細菌はさらに進化していったのです。

この進化した細菌の名前を『耐性菌』と言います。

『耐性菌』?
聞いたことがあるかもしれません。

こうした戦いにはきりがありません。
戦いは永遠と続くのです。

現時点では細菌の進化がまさっています。

耐性菌として有名なものに『MRSA』というものがあります

『MRSA』とは、メチシリン・レジスタント・スタヒロコッカス・アウレウス
の略で、メチシリン(抗生物質の名称)に耐性を獲得した黄色ブドウ球菌のことです。

つまり、『抗生物質』が効かない細菌のことです。

MRSAは1961年に英国で最初に報告されました。
その後、1970年代に米国で報告され、
日本では、1980年代になってMRSAの出現が報告されています。

1929年フレミングが、青カビ(微生物)から偶然発見した抗生物質により、人間にとって恐怖であった感染症は劇的に解消されました。

先にも書きましたように抗生物質は20世紀最大の発見です。

地球の誕生から生息していた細菌は、この20世紀最大の発見(抗生物質)により壊滅的な打撃を受けました。

細菌にとっては抗生物質の出現は危機的なこととなってしまいました。

長い年月の間生息してきた細菌にとってなんとかしなければならないことです。

耐性菌とは、そうした『抗生物質』に対抗する細菌の防衛手段だったのです。

しかし、この耐性菌の出現の裏側には、『抗生物質』の乱用が関わっていました。

耐性菌の歴史

1942年

ファイザー製薬がペニリシンの大量生産に成功したことにより、
世界中で使用されることになる。

しかし、ペニシリンの大量使用によりペニシリンの耐性菌が出現する。

抗生物質『メチシリン』の開発により、従来のペニシリン耐性菌
を抑えることに成功

1961年

しかし、メチシリンでは効かない耐性菌MRSA(メチシリン耐性
黄色ブドウ球菌)が出現。

    年

耐性菌MRSAに効果がある『バンコマイシン』が開発

1986年

バンコマイシンが効かないVRE(バンコマイシン耐性腸球菌)
が出現

このように『抗生物質』と耐性菌との戦いは永遠と続くのです。

たしかに新しい耐性菌ができれば、それに対抗する『抗生物質』を研究開発することも必要ですが、間違った『抗生物質』の使用をしないことも大切です。

VRE(バンコマイシン耐性腸球菌)

VREについてさらに詳しく

VREはバンコマイシン耐性腸球菌と言います。

腸球菌は私達の体内にいる通常の細菌です。

健康であれば、腸球菌が悪さをすることはありません。

しかし、高齢者や抵抗力が低下しているヒトが感染すると重い症状になることがあります。

通常感染が確認された場合、『抗生物質』を服用するわけですが、VRE(バンコマイシン耐性腸球菌)の場合、『抗生物質』の効果がほとんどないため、死亡するケースもあります。

VRE(バンコマイシン耐性腸球菌)はなぜ出現したのか?

人間が食肉とする家畜に対して、その病気の感染を防ぐため、
『アボパルシン』という『抗生物質』を大量に使用したことが原因とされています。

『アボパルシン』を大量摂取した家畜は『アボパルシン耐性菌』を持つことになります。

この『アボパルシン』は『バンコマイシン』に似た化学構造を持っています。

そのため、『アボパルシン耐性菌』を持った家畜を食べた人間も経口感染したと考えられています。

現在、日本では家畜飼料に『抗生物質』アボパルシンを添加することが禁止されています。

この続きは抗生物質:その2をご覧下さい。

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