インプラント治療後の歯肉退縮

論文紹介:唇側軟組織レベルの長期的変化

前歯部においてインプラントを行うことは審美性がかかわり、難しい場所です。
一番問題となるのはインプラント埋入後の歯肉の退縮です。
インプラント埋入後、インプラント周囲の骨は若干吸収します。
これば病的なことではなく、一般的に起ることで、生理的な現象です。また骨の吸収に伴い、歯肉の退縮も起ります。
こうしたことを予測して前歯部の場合には若干インプラントを深めに埋入します。
下記はインプラント埋入後に起る歯肉退縮ついての論文(多数あるうちの一つ)です。

論文タイトル インプラント治療後における唇側軟組織レベルの長期的変化
研究者名 Oates TW 他
論文掲載誌 Implant Dent.2002

インプラントの埋入法にはインプラント埋入時に歯肉の中にインプラントを入れ、後で再度インプラントの上の部分(頭の部分)を出す2回法(2回の手術が必要)と当医院で使用しているI.T.Iインプラントのように手術時にインプラントの上の部分を露出させて終了する1回法(違いの詳細はHPを参考にして下さい)があります。
1回法は2回法に比較して軟組織への侵襲が少ないため歯肉の退縮が少ないとされてきました。
しかし、前歯部のように審美性がとわれる部位は通常よりも深くインプラントを埋入します。
深く埋入するということは最終的にインプラントと被せ物の境目が歯肉の中深くに位置することになります。
こればインプラントと被せ物の境目が見えないようにするためです。
しかし、境目が歯肉の深い位置にあると歯肉に対する侵襲が認められ、歯肉は退縮する傾向にあります。

本研究では39名の患者さんに対し、106本のI.T.Iインプラントを埋入し、2年間歯肉の退縮を観察しました。
結果として39名のうち24名が1mm以上の歯肉の退縮が起りました。
退縮の経時的な変化は被せ物を装着した直後から6ヶ月間で平均0.6mm退縮しました。
その後の退縮率は減少していますが、一般的には約6ヶ月~1年程度は退縮傾向が続きます。
このことから上顎前歯部にインプラントを行う場合にはある程度歯肉が退縮することを考慮にいれ、インプラントを行う必要性があることがわかります。 ただし、この退縮は骨の厚み、歯肉の厚み、噛み合わせ等さなざまな条件により異なります。
つまり審美性が問われる部位のインプラントは難しいのです。