インプラントがダメになる原因

噛み合わせ(被せ物や歯軋りに対すること)による問題

インプラントは非常に成功率の高い治療ですが、決して100%ではありません。
どのような歯科治療もそうですが、一度治療した部位が一生何ごともなく保つことは難しいことです。
例えば被せ物はその形態を一生保たせることは不可能です。
毎日噛むことにより被せ物は必ず磨り減るのです。もちろん噛む力には個人差はありますし、歯軋りの有無や程度によっても違いますが、必ず少しずつ磨り減ります。
靴に例えると毎日使用していれば靴底は磨り減ります。
磨り減り方には個人差があり、踵の部分が磨り減ったり、内側のみ、外側のみ、右側、左側と磨り減ったりします。
口腔内も同様に右で良く噛む人は右側が磨り減ったりします。
また歯軋りやくいしばりがある方は磨り減り方が大きいものです。
ですから被せ物は消耗品です。
20歳でセラミックをした人はその形態が60年、70年と不変であることはありません。
噛む力によってはセラミックに日々負担がかかり、かけたりする場合もあります。
特にインプラントは天然歯と違い歯根膜というクッションのようなものが存在しないため噛んでも動かない(沈み込まない)ので噛む力が直接インプラントの被せ物にかかります。
被せ物を装着した時にはそうなならいように噛み合わせの調節を行いますが、時間の経過とともに噛み合わせは変化し、インプラント部に負担がかかってくることがあります。
こうしたことを少しでも防止するためには被せ物を金属性の物にすることが考えられます。金属製の被せ物は見た目にはよくないですが、かけたりすることはありません。磨り減り方も少なくインプラントの被せ物としては有効なものです。
このような噛み合わせの変化は定期検査でみていくことが大切です。
次に『歯軋り』や『くいしばり』による問題です。
私達がインプラントを行う際に最も注意するケースです。
先程インプラントには天然歯と違い歯根膜というクッションが存在しないために噛む力が直接加わるという話しをしました。
『歯軋り』や『くいしばり』がある方はこうした力をさらに受けやすいのです。
こうした傾向が強い方にはインプラントをお勧めしないこともあります。(歯軋りを強くしている方は歯を見ると削れている状態が認められます。また歯軋りで天然歯がダメになった場合にはインプラントを行ってもダメになる可能性があります)
『歯軋り』や『くいしばり』の防止策として『ナイトガード』といわれるマウスピースのようなものを夜間装着していただきます。

インプラント埋入直後に起ること

インプラントがダメになる時期として一番多いは、インプラントを埋入した直後です。
インプラントが骨と結合(くっつく)するまでの期間です。
その原因としては大きく分けて以下のことが考えられます。

骨の硬さによる問題(インプラントの安定性が悪い場合) 感染による問題 インプラントに無理な負荷(力)がかかった場合

まず一番目の骨の硬さによる問題ですが、骨には軟らかい骨と硬い骨とがあります。問題となるのは軟らかい骨です。わかりやすい話しをしますと骨粗鬆症という骨の状態があります。聞いたことはあるかと思います。骨がぼそぼそで軟らかい骨のことです。転んだだけでも骨折するような骨のことです。
軟らかい骨は上顎、特に奥歯に認められます。女性と男性を比較すると女性に多く、年齢が高くなればなるほどその傾向は高くなります。
もしインプラントの手術時に骨が軟らかいと思われた場合(もしくはインプラントの安定性が悪いと思われた場合)には通常よりも長い期間お待ちいただくことになります。
またインプラントの本数を増やす等の対応も有効になります。

次に感染による問題です。
インプラント手術直後は傷口から感染しないように抗性物質を服用していただくとともに毎食後に抗菌性のある洗口剤(クロルヘキシジン含有製剤)でうがいをしていただきます。
しかし、十分うがいができていない方は感染を起こすことがあります。
もし初期に感染を起こし、骨と結合していないと判断した場合には早期にインプラントを摘出させていただきます。感染を疑った状態で無理に放置することは周囲の骨を吸収させてしまいのちの治療を困難にさせるからです。
摘出後は歯肉の治りを待ち再度インプラントの埋入をさせていただきます。
もちろん再埋入の費用はかかりません。

3番目はインプラントに無理な負荷(力)がかかった場合です。
これがインプラントの初期の問題で最も多いことです。
インプラントと骨が結合するまでは無理な力が加わらないように安静にします。
欠損が少ない場合には問題はあまりありませんが、総義歯のように大きな義歯を使用している場合には問題が起る可能性があります。
義歯から加わる圧力でその下にあるインプラントに負荷がかかるのです。
義歯を使用している方には義歯とインプラントが接触する部位をくり抜き負荷がかからないようにしますが、やはり歯肉が腫れてきたりしますとどうしても義歯による圧迫が起ります。
大変だとは思いますが、歯肉の腫れがおさまるまでの期間は外出する時や食事以外はできる限り義歯の使用は控えていただきたいと思います。
またインプラント埋入後(1回法の場合)には口腔内にインプラントの蓋(金属性の丸い蓋)が見えます。
この蓋をできる限り触らないようにしていただきたいと思います。
指や舌で触ったり、歯ブラシの先で触れないようにしていただきたいと思います。
また食事の際にもできる限りインプラントを行った側で噛むのを避けていただきたいと思います。
インプラント手術直後は御不自由なことがありますが、ご理解をいただきたいと思います。

歯周病による問題

インプラントのページのさまざまなところでインプラントと歯周病の話しをしていますが、インプラントも天然歯と同様に歯周病のような状態になります。
これを『インプラント周囲炎』といいます。
歯周病細菌がインプラントにも感染するのです。
初期では歯肉が腫れます。次第に細菌は骨にもおよびインプラント周囲の骨は吸収を起こします。
最終的にはインプラントはグラグラとし、脱落します。
インプラントは虫歯になることはありませんが、インプラント周囲炎という状態にはなります。
ですからインプラント治療後も徹底したブラッシングが必要ですし、始めに歯周病がある場合には歯周病の治療後にインプラントを行うことになります。またインプラントが長期的に安定するためには定期検査が非常に重要になってきます。