インプラント治療の問題、失敗、トラブル、リスク
インプラント周囲炎とは?
インプラント周囲炎とは?
インプラント周囲炎とは、インプラントが歯周病と同じような症状になることです。
インプラント治療後に歯ブラシが不十分になると汚れは歯肉とインプラントの境目から内部に侵入していきます。
この汚れは歯周病細菌と同様の細菌です。
(天然歯に見られる歯周病細菌とインプラント周囲に見られる細菌が同じであることはこの後に詳しくお話します)
そして初期の段階ではインプラント周囲の歯肉が腫れて行きます。
その後インプラントを支えている歯槽骨を吸収してしまいます。
最終的にはインプラントはダメになり、撤去することになります。
人工物であるインプラントには神経が通っていません。
そのため初期の段階では多くの場合、自覚症状がありません。
そのため、かなり状態が進行しなければ気付かないのが特徴です。
インプラントは天然歯と同様に歯周病菌に感染するのか?
『インプラントが感染によりダメになった場合、天然歯の歯周病と同じ歯周病細菌は検出されるのか?』
という論文をご紹介したいと思います。
これは1999年に 『Int. J.Oral Maxillofac. Implants』に掲載されていたものです。
(インプラントの論文誌では有名なものです)
発表者は 『Lekholm,Uら』です。
この人達もインプラントの研究者では有名な方々です。
対象患者さんは127名(18~70歳、平均50歳)で、ブラッシングが十分できている患者です。
対象とするインプラントは上顎176本、下顎262本です。
この状態で10年間メインテナンスを受けながら観察をしました。
何度も書きますが、ブラッシングが良い人達です。
結果は以下のようでした。
インプラントの10年後の成功率は
上顎で92%、
下顎で 93.7%でした。
残存した天然歯およびインプラントからは
歯周病細菌が
『天然歯で 9.7%』、
『インプラントで 10.6%』
検出されました。
つまりインプラントも天然歯も同様の細菌により感染するということです。
人工の物(インプラント)だから大丈夫ではないということです。
それではインプラント周囲炎になった症例を見ていきましょう。
下の写真は初診の状態です。
初診時、左下にあるインプラントが歯周病による感染が起っている状態でした。
インプラント周囲の歯肉は腫れ、膿みもでていました。
これは歯周病の治療を行わないで単に欠損部位にインプラントを行ったために起ったことです。
インプラントは摘出しなければ、ならない状態でした。
歯周病の患者さんにインプラントは可能か?
それでは歯周病の患者さんにインプラントを行うとどうなるのでしょうか?
まず歯周病が存在する状態ではインプラントは絶対にできません。
それは先程の論文でも紹介したように歯周病細菌はインプラントにも感染するのです。
インプラントを行うためにはまず歯周病の検査を行うことは必須です。
逆に言えば歯周病の検査なしでインプラント治療を行う歯科医院は問題があります。
そうした歯科医院ではインプラントは絶対に受けるべきではありません。
それではまた一つの論文をご紹介したいと思います。
軽度歯周病患者におけるインプラントの予後報告です。
これはあくまでも
『軽度』の歯周病ということです。
掲載論文は『Int. J.Oral Maxillofac. Implants, 1999』です。
研究者は『Nevins, M.& Langer, B』
歯科界では非常に有名な研究者達です。
対象患者さんは 59名(50~60歳)でこれも先程と同様に
ブラッシングが十分できている患者ばかりを選択しています。
上記の59名の患者さんには上顎177本、下顎132本
のインプラントが埋入されました。
もちろん徹底した歯周病の治療を行った後、インプラントを埋入しました。
そしてメインテナンスにて経過観察していきました。
観察期間は1~6年程度です。
結果は以下のようでした。
成功率は上顎で98%(174本)、下顎で97%(128本)でした。
これは徹底した管理を行えば、歯周病患者においてもインプラントを行うことは可能であることを意味しています。
下の写真は先程の患者様のレントゲン写真です。
重度歯周病患者さんにインプラントは可能か?
先程は『軽度』の歯周病患者さんにインプラントを行った場合でした。
それでは『重度』の歯周病患者さんにインプラントを行った場合はどうでしょうか?
同様に論文を紹介します。
論文は『中程度歯周病患者と非常に進行した歯周病患者における インプラントの予後報告』です。
掲載論文は『Periodontol., 2001』です。
研究者はMengel, R. et al : J.です。
対象患者さんは以下のように分類されました。
グループ1:
中程度までの歯周病患者5名に対し12本のインプラントを埋入しました。
グループ2:
非常に進行した歯周病患者さん(広汎性侵襲性歯周病と言います)患者5名に対し36本のインプラントを埋入しました。
もちろんグループ1、2ともにインプラント埋入前に徹底した歯周病治療を行っています。
そして全ての患者さんは歯ブラシが十分できています。
結果は以下のようでした。
インプラントの成功率は中程度の歯周病患者さんで100%、
非常に進行した歯周病患者さんで88.8%でした。
この結果からわかることは
常に進行した歯周病(広汎性侵襲性歯周病)でも適切な歯周病治療、メインテナンス(定期検査)が行われれば、インプラントは可能です。
しかし、徹底したブラッシングと管理を行ってもリスクは高かった。
ということです。
では歯周病患者さんはインプラントはできないのか?
歯周病患者さんにおけるインプラントの長期予後報告からインプラント治療前に徹底した歯周病治療が行われ、
その後にメインテナンス(定期検査)が行われていれば、
歯周病患者にインプラントを行うことは可能であることがわかりました。
しかし、長期的には非歯周病患者と比較してインプラントの成功率の低下が認められました。
このことは歯周病患者にインプラントを行うことのリスクを示唆しています。
こうしたことから歯周病患者にインプラントを行う場合、
単に欠損部位にインプラントを行うだけでなく、
歯周病罹患歯の抜歯の適応基準を含め、
将来性を含めた包括的(歯周病の治療、残存歯の予知性、噛み合せ、患者さんのブラッシングの程度など)な治療計画が必要であることがわかります。
また問題となるのが、重度歯周病の場合です。
将来性もそうですが、歯周病による骨吸収が起こるため、
抜歯後にインプラントを行おうとしても、
骨の増大法(GBR法)を併用しなければならないケースがほとんどであり、治療を受ける患者さんにとっても大変なこととなってきます。
結局、歯周病患者さんにインプラントを行うことは可能ですが、将来性を見据えた治療計画が重要であることと、
その後のブラッシングと定期検査が重要であるということです。
どちらにせよ、リスクが高いことには変わりません。
インプラント周囲炎の治療
インプラント周囲炎の治療は、原因に応じた対策が必要になってきます。
最も重要なのは感染の除去です。
インプラント周囲の歯肉に麻酔を行い、歯肉内部に侵入した歯周病細菌を取り除きます。
これを『歯周病細菌除菌療法』と言います。
同時に抗生剤の服用を行います。
歯肉の内部には消毒薬による洗浄を行い、場合により歯肉内部にも抗生剤を注入します。
さらに進行してしまった場合には外科処置を行う必要性があります。
こうした治療を行っても効果がない場合にはインプラントを撤去することがあるかもしれません。
このようにならないためには毎日の徹底したブラッシングが大切なのはもちろんのこと定期検査が大切です。
インプラントの定期管理(メインテナンス)についてはこちらを御覧下さい。
またインプラントの手入れ方法についてはこちらを御覧下さい。
またインプラント周囲炎の治療の詳細についてはこちらを御覧下さい。
インプラント周囲炎は自覚症状がないことが多いため定期的な観察が大切です。
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