3、顎臼歯部に骨の高さがまったくない場合(サイナスリフトを行わないで治療する方法)

3、顎臼歯部に骨の高さがまったくない場合

上顎には3歯残存していますが、その全ての根が破折しており、抜歯となってしまいます。抜歯後、インプラントを希望されましたが、上顎の臼歯部にはインプラントを埋入するための骨の高さがないため、サイナスリフトの必要性を説明しましたが、骨の移植はしたくないとのことであったため、前歯部部分にインプラントを埋入し、奥歯は被せ物を延長する形で行っています。こうした方法をとることにより、サイナスリフト(骨移植)を行わなくても奥まで歯を作ることができます。

顎臼歯部に骨の高さがまったくない場合

矢印(←)の部分が被せ物を延長した部分です。上のような奥に付けたダミーの歯を『カンチレバー』といいます。

顎臼歯部に骨の高さがまったくない場合

それではこのようなカンチレバーは良いのでしょうか?
問題は起らないのでしょうか?
以下にはカンチレバーを行った被せ物の予後を10年間観察した論文を報告します。

論文著者 Curtis M Becker
掲載論文誌 Quintessence International 6/2004
対象患者 36名
使用インプラント I.T.Iインプラント
使用本数および被せ物の数 115本、60の装置
プラーク量 <現在の口腔衛生状態(汚れの付着)の評価/td>
フッ化物プログラム フッ素の使用頻度の評価
唾液分泌 唾液の分泌量の測定
唾液緩衝能 虫歯菌の出す”酸”の緩衝能力の評価/td>
臨床判断 歯並び、被せ物の適合状態等の評価

以上の条件のもと埋入したインプラントを10年間観察した。
下記のようなことであればカンチレバーという治療は問題なく行えるということです。

結果 10年後に全ての症例、全てのインプラントにおいて口腔内、レントゲン所見において異常は認められなかった。
考察 カンチレバーによる治療は条件さえそろえば良好な結果を得る治療であることがわかった。その条件とは以下のようなことである。
(1) 骨との結合が良いインプラント表面をもったものを使用すること(これはSLAインプラントといわれるもので当医院ではこのインプラントを100%使用しています)
(2) 直径4.1mm以上のインプラントを使用すること。(当医院でも特別なことがないかぎり直径4.1mm以上のインプラントを使用しています)
(3) ネジ式でない接着剤を使用した被せ物にすること。