歯周病の治療の流れ

歯周病の治療と言うと、
『どのように治療を進めていくのだろう?』
『治療回数は何回くらいかかるのか?』
『痛みはあるのか?』
『保健は適応されるのか?』等分からないことがいっぱいあると思います。
この項では、初診時から治療終了後までの一般的な流れを解説したいと思います。
以下は、重度歯周病の場合の治療方法です。
以下には、虫歯等の治療内容は含まれていません。
あくまで歯肉(歯周病)の治療だけです。

①初診時

歯周病の検査(レントゲン、歯周ポケット検査、口腔内写真…等)

②歯周病の初期治療

a.ブラッシング指導(歯磨きの徹底:これができないと治療は進まない!)

歯周病の第一の原因は口腔内のプラーク(磨き残しの汚れ)です。
ブラッシングはきちんとできているようでも100%行うことは難しいものです。
ブラッシングがきちんとできていない状態で歯周病の治療を行っても必ず再発してしまいます。
初期の段階でできるかぎり100%に近いブラッシングができるようにしましょう。
歯周病が再発した場合、歯を失うことになりますので注意が必要です。
またこの段階でおおまかな歯石の除去等を行います。
歯石の除去とブラッシングを徹底して行うことにより、口腔内の歯周病細菌の数の減少が起ります。
ある程度口腔内の歯周病細菌が減少した段階で次の治療段階に進みます。
ブラッシングが重要であることを例えると糖尿病が高血圧、高コレステロールの治療と同じことになります。
もし、糖尿病が高血圧、高コレステロールであった場合、単に薬を服用すれば治るということではありません。
食生活の改善や運動、喫煙…等生活習慣の改善ができなければ治らないことはご存知のことと思います。
歯周病の大きな原因は、適切な歯磨きができていいないことです。
歯周病治療前に徹底して正しい歯磨きを習得することが今後の治療の正否を大きく左右します。
また、喫煙、食生活、睡眠、運動、ストレス等は歯周病を悪化させる大きな原因になります。
口腔内も身体の一部ですから、全身的な健康が歯周病にも影響してきます。

b.抜歯(どうしてもダメな歯の抜歯)

歯周治療を行っても感染原因を取除けない歯を放置しておくと、取残しとなった歯周病細菌は必ず他の歯に感染します。
他の歯もダメになってしまいますのでどうしても抜歯が必要です。
また感染が取除けないと歯を支えている骨はどんどんと吸収してしまい、抜歯となった後の治療が難しくなってしまいます。
歯周病治療の大きな目的は、口腔内から歯周病細菌をなくすことですので、全体にダメな歯は最初の段階で抜歯することが重要です。
『残る歯(治療可能な歯)』と『完全にダメな歯を(治療不可能な歯)』の線引きをきちんと行うことは歯周病治療を行うにあたり非常に重要なことです。

c.欠損部分の義歯の作成 および仮歯の作製

抜歯した部位や欠損部位をそのままにしておくことは良いことではありません。
これは、単に審美的な問題や噛めないということだけではなく、残っている歯にも負担がかかってしまうからです。
一番始めに仮歯の作製や義歯の作製を行います。

d.ルートプレーニング(歯周病細菌除去療法)

歯周病の最も基本的な治療が『ルートプレーニング』です。
歯周病の初期治療の中で最も重要な治療です。
『ルートプレーニング』を簡単に説明すると歯周ポケット内部に入り込んだ歯石を取り除く治療です。
歯周ポケットが深いところには歯肉の下に歯石がついています。
また、歯根には細菌が出す毒素が根面に浸透しています。
そうした歯石や細菌を除去し、根面の汚染物質を取り除くことが、『ルートプレーニング』なのです。
具体的な治療方法ですが、まず歯肉に若干の麻酔をします。
ただ歯石を除去するだけでは麻酔は必要ありませんが、歯周ポケットの深い部分の汚染物質を除去するためには麻酔をしないと絶対に取れません。
歯石や汚染物質は『キュレット』と言われる専用の器具をポケット内部に入れ、歯の根に沿わすように上下に動かし、歯石等の汚染物質を除去していきます。
治療時間は歯数や部位、状態によって違いますが、30~40分程度です。
麻酔が切れた時に若干違和感はありますが、ズキズキとした痛みはありません。
※歯周病細菌除去治療は、短い間隔で行うことが重要です。
この理由として、部分的に細菌を除去しても、他の部位が治っていないと歯周病が残っている場所から、菌を除去した部位に次々に感染してしまうからです。
1週間に1~2回程度が最適です。

ルートプレーニング(歯周病細菌除去療法)

e.噛み合せの調整(噛み合わせに問題のある方のみですが…)

噛み合わせと歯周病には非常に大きな関係があります。
例えば、ある一定の歯のみに強い力が加わるような噛み合わせをしていると歯自体に負担がかかってしまいます。
このような状態を『咬合性外傷』と言います。
簡単に言えば、歯が『打撲』している状態です。
このような場合、歯への負担を軽減させるために、強くぶつかっている部分のみを少し削除し、安静にさせます。
『咬合調整』と言います。
また、『歯ぎしり』や『くいしばり』が強い方は、歯に強い負担が加わります。
歯周病の状態は改善しても噛み合せが改善しなければ歯はダメになります。
こうした歯に加わる力の負担を少しでも軽減するためには、夜間の『ナイトガード』と言われるマウスピースの使用が有効です。
『ナイトガード』は、保健診療で作製が可能です。
約5,000円になります。(2009年度保険診療)
また、被せ物が多く装着されており、被せ物自体が噛み合わせを大きく変位させている場合には、被せ物の再作製を行う場合も考えられます。

③歯周病の再検査(歯周ポケット検査)

ルートプレーニングを行った部位に対し再度歯周ポケット検査を行い、どこまで治ったかを判定します。
一般的に初診時に6mm以下の歯周ポケットであれば初期治療(ルートプレーニング)で治る可能性が十分あります。
しかし、この再検査で問題がまだ残った場合には、問題を残したままにしておくことはできませんので、④の治療に進みます。

④歯周外科処置:(フラップ・オペレーション)

『フラップ・オペレーション』とは、歯周病の初期治療である『ルートプレーニング(歯周病細菌除去療法)』の後に行う治療です。
歯周外科処置というとちょっと恐い感じがしますが、治療自体は『ルートプレーニング』とさほど変わるものではありません。
一般的に初診時に6mm以上の歯周ポケットがあった場合には、再評価の時点でもまた問題が残る可能性があります。
問題(歯周ポケットがある)があるということは、まだ歯肉の内部に汚れや歯周病細菌が残っているということです。
細菌を残したまま、治療を終了すると必ず再発してしまいます。
つまり、『フラップ・オペレーション』とは『ルートプレーニング』では取りきれなかった深い部分に存在する汚れや歯周病細菌を取除く ことになります。
『ルートプレーニング』と違うところは歯肉に切開を加えることです。
切開をすることにより、歯肉の深い部分まで直視することが可能になります。
治療自体は麻酔を行いますので、痛みがあることはありません。
しかし、個人差はありますが、治療後に腫れる可能性があります。
状況により多少大変なところもありますが、この『フラップ・オペレーション』を行わないと歯周病は治りません。
1歯分の治療費はおおよそ2,000~3,000円程度になります。(2009年の保健診療)
また、『フラップ・オペレーション』の中には、骨再生治療『GTR法』『エムドゲイン法』があります。
※骨再生治療は自費診療になります。

⑤最終的な検査(歯周ポケット検査等)

④の歯周病外科処置を行った方は、治療の再評価を行います。

⑥メインテナンス(定期検査)

歯周病は再発しやすい疾患です。治療終了後も定期的な管理が重要になります。
定期検査の内容はレントゲン検査、歯周ポケット検査、歯石除去等の口腔内のクリーニング等です。
メインテナンスにおける専門的なクリーニングのことを『PMTC』と言います。
メインテナンス(定期検査)の詳細は、下記をご覧下さい。 メインテナンスが必要な科学的根拠(理由)