FMD治療

短期集中 歯周病細菌除菌プログラム FMD治療

短期間で歯周病細菌を除菌 FMD治療

短期間で歯周病細菌を除菌 FMD治療

FMD治療とは、1995年にQuirynen Mらが提唱した歯周病の治療法です。
一般的に行われている歯周病治療ルートプレーニング(歯周ポケット内部に存在する汚れや歯周病細菌を除去する治療)は、4~6回に分けて行われます。
こうした一般的に行われる複数回(4~6回)に分けて行う歯周病治療(ルートプレーニング)は、治療が完了していない部位から治療が完了した部位へと細菌が感染(転移)することが分かっています。
特に重度歯周病(侵襲性歯周炎)で起こる可能性が高いとされています。
侵襲性歯周炎の場合、悪性度の強い歯周病細菌(P.g.菌 や A.a.菌…等)が非常に多く検出されます。
これらの悪性度の強い歯周病細菌は、通常の4~6回に分けて行われる歯周病治療では 感染(転移)してしまうため、1回(1日)もしくは1週間以内に歯周病細菌を除去(ルートプレーニング)すると同時(FMD治療)に舌や口腔粘膜等に付着している歯周病細菌を抗菌薬(CHX抗菌うがい薬、3DS法の使用)を用いて除去あるいは抑制させて、感染(転移)をさせない治療法です。
現在では FMDと同時に 悪性度の強い歯周病細菌に効果の高い抗菌薬を服用して除菌することが行われています。(内科的歯周病治療)
以下では上記の内容を詳細に解説します。

FMD治療のポイント

  • ポイント1:歯周病をより効果的に治す(進行した歯周病を最大限改善)
  • ポイント2:通院回数を極力少なくしたい方、忙しい方に最適
  • ポイント3:最新の歯周病治療(PDT、エムドゲイン法、GTR法、3DS)で対応
  • ポイント4:歯科恐怖症の方に最適(静脈内鎮静法で眠った状態で治療が可能)

私自身、歯周病専門医として、長く歯周病治療に携わってきました。
歯周病は軽度であれば、さほど治療回数も少なく(短期間)て簡単に治療を終了することが可能です。
しかし、進行した歯周病(侵襲性歯周炎)であった場合には、治療回数も多く(長期間)なることが多いです。
歯周病の治療として、「SRP/スケーリング•ルートプレーニング」という治療法があります。
歯周病治療の基本中の基本です。
「SRP/スケーリング•ルートプレーニング」とは、歯と歯肉の隙間(歯周ポケット)に器具を挿入し、歯肉の内部に侵入した汚れ(歯石)や細菌を取り除く治療です。
深い歯周ポケットの場合、歯肉に麻酔を行い、歯石の除去および歯根面の汚染物質を取り除く治療法です。
以下の写真のような方法です。

FMD治療のポイント

1.FMDによる歯周病治療とはなにか?

始めにFMDについて簡単に説明しましたが、ここではさらに詳細に解説します。
通常保険診療で行う「SRP/スケーリング•ルートプレーニング」にかかる治療時間は、一度に行う歯数や部位(前歯か奥歯か)、歯周病の進行程度等によっても大きく変わりますが、約30~60分程度です。
この治療を約4~6回に分けて行うのが一般的です。(歯の残っている数等によっても変わります)
もし、1週間に1回の来院が可能であったとしても6回に分けて「SRP/スケーリング•ルートプレーニング」を行うと1ヶ月半の治療期間がかかります。
もちろんこれは、「SRP/スケーリング•ルートプレーニング」だけにかかる治療期間のことです。
もし、連続して通院が難しい場合で、2~3週間に1回の通院であった場合には、口腔内全ての「SRP/スケーリング•ルートプレーニング」を行うためには約3ヶ月かかることになります。
こうしたことは、治療回数が長くかかるという問題だけでなく、進行した重度歯周病(侵襲性歯周炎:しんしゅうせいししゅうえん)の場合、治療効果にも大きな影響を及ぼす可能性があります。
4~6回に分けて行う一般的な歯周病治療の場合、最初(1回目)に 「SRP/スケーリング•ルートプレーニング」を行った部位では当然感染(歯周病細菌)は減少します。
しかし、まだ歯周病治療を行っていない部位では、歯周病細菌が残っているわけですからそこから最初にSRPを行った部位に再度感染が起こってしまうのです。
歯周病細菌の転移(伝播:でんぱ)が起こるのです。
そのため、進行した重度歯周病の場合(侵襲性歯周炎)の場合、「SRP/スケーリング•ルートプレーニング」は短期間で治療を行うことで効果があると言えるのです。
そこで短期間(1日もしくは数回に分けて)で全ての歯周病に感染した歯に対して、「SRP/スケーリング•ルートプレーニング」を行うことで、歯周病細菌を他の歯に転移させないようにする治療方法をFMD(Full Mouth Disinfection)法と言います。

2.歯周病治療後の歯周病細菌の変化

一般的な慢性歯周炎の場合、SRP/スケーリング•ルートプレーニングを行うことで歯周ポケット内の細菌(歯周病細菌)の数は劇的に減少します。
しかし、進行した重度歯周病(侵襲性歯周炎:しんしゅうせい ししゅうえん)の場合、通常のSRP/スケーリング・ルートプレーニングを行うと細菌の数は減るものの、治療後、約4週間程度で細菌叢(細菌の割合:比率)は元に戻ってしまうことが多くの研究論文で分かっています。
つまり、進行した重度歯周病(侵襲性歯周炎)では、歯周病治療後に細菌の数は減ってはいくものの毒性の強い細菌の割合(比率)は大幅には変化しないのです。
以下は、慢性歯周炎(一般的な歯周炎)と重度歯周炎(侵襲性歯周炎)に対して、SRPを行った後の歯周病細菌の変化(細菌の比率:割合)をみたデータの一つです。
P.g.菌(オレンジ色)とP.i.菌(紫色)とT.f.菌(緑色)は、毒性の強い歯周病細菌です。
この細菌が存在する場合、歯周病が進行していると言えます。
治療前には慢性歯周炎と侵襲性歯周炎ともに毒性の強いP.g.菌が認められます。
歯周病治療後(SRP後)、慢性歯周炎では毒性の強い細菌(P.g.菌、P.i.菌、T.f.菌)の減少が認められますが、侵襲性歯周炎の場合、治療後に毒性の強い細菌(P.g.菌、P.i.菌、T.f.菌)の割合に変化がないことが分かるかと思います。(悪性度の高い細菌比率が変化していない)

歯周病治療後の歯周病細菌の変化

3.抗菌療法(除菌療法)

「2.歯周病治療後の歯周病細菌の変化」の項では、進行した重度歯周炎(侵襲性歯周炎)では、歯周病治療(SRP)を行った後でも歯周病細菌の数は減少するが、毒性の強い歯周病細菌の比率(構成比)は、大幅には変わらないことを解説しました。
それでは、進行した重度歯周炎(侵襲性歯周炎)の場合、どうしたら毒性の強い歯周病細菌を減らすことができるのでしょうか?
まず、感染を抑えるために短期間でSRP/スケーリング•ルートプレーニングを行います。
つまり「1.FMDによる歯周病治療」の項で解説したFMD(Full Mouth Disinfection)法を行うのです。
これは 細菌の転移(伝播:でんぱ)を防ぐためです。
次に毒性の強い歯周病細菌を除菌するための抗菌薬を服用します。
通常は、SRP/スケーリング•ルートプレーニングを行う治療前から抗菌剤を服用します。
抗菌剤による毒性の強い歯周病細菌の除菌を行うのです。
以下は、「2.歯周病治療後の歯周病細菌の変化」の項で解説したデータの続きで、抗菌剤の効果をみたデータです。
P.G 菌(オレンジ色)は毒性の強い歯周病細菌で、青色の細菌は毒性の低い歯周病細菌です。
抗菌剤を併用すると毒性の強い歯周病細菌の比率は劇的に少なくなることが認められました。

抗菌療法(除菌療法)

4.除菌療法:3DS法、CHX洗口法

「1.FMDによる歯周病治療」の項では、進行した重度歯周病(侵襲性歯周炎:しんしゅうせいししゅうえん)の場合、短期間で「SRP/スケーリング•ルートプレーニング」を行うことで歯周病細菌の転移を最小限に防ぐことが可能であることを解説しました。
FMD(Full Mouth Disinfection)法です。
また、「2.歯周病治療後の歯周病細菌の変化」の項では、進行した重度歯周炎(侵襲性歯周炎)では、歯周病治療(SRP)を行った後でも歯周病細菌の数は減少するが、毒性の強い歯周病細菌の比率は変化が少ないことを解説しました。
さらに、「3.抗菌療法(除菌療法」の項では、進行した重度歯周病(侵襲性歯周炎)において抗菌療法を行うことで、毒性の強い歯周病細菌を減らすことの有用性を解説しました。
この項では、さらに歯周病細菌を減らすための方法を解説します。
歯周病細菌は、歯周ポケット内部のみに生息しているわけではありません。
歯周ポケット以外にも唾液中や口腔粘膜、舌、扁桃腺にも生息していることが多くの研究で分かっています。
そのため、歯周ポケットのみを対象とした歯周病治療(SRP)を行うだけでなく、口腔内全体の除菌も併用して行うことが有効なのです。
その方法が3DS法という方法です。
具体的な3DSの方法として、歯形を取り、患者様個人に合わせたマウスピースを作製します。
このマウスピースの内部に抗菌性の高い薬剤を入れて除菌するのです。
また、治療期間中は、食後に抗菌性の高いうがい薬を使用します。
こうしたことを徹底して行うことで、歯周病細菌を除菌し、治療した部位への再感染を最小限に防ぐことを行います。

5.歯周病の再感染(再発)と家族内感染(伝播)について

ここまでのまとめとして、進行した重度歯周病(侵襲性歯周炎:しんしゅうせいししゅうえん)の場合、何回かに分けて部分的に歯周病の治療(SRP/スケーリング•ルートプレーニング)を行ってもまだ治療を行っていない部分から歯周病細菌が感染する可能性があるため、1日もしくは短期間でSRP/スケーリング•ルートプレーニングを行うことで、歯周病細菌の感染を最小限に抑えることが可能となることを解説しました。
この方法をFMD(Full Mouth Disinfection)法と言います。
しかし、進行した歯周炎(侵襲性歯周炎)では、短期的にFMD(Full Mouth Disinfection)法を行うことで他部位への感染は少なくなり、細菌の数は圧倒的に減少はするが、歯周病細菌の比率(割合)には、あまり変化がないことも解説しました。
悪性の強い歯周病細菌が残ることで歯周病は再発するのです。
そこでFMD(Full Mouth Disinfection)法の効果をさらにあげるためには、抗菌薬による除菌療法が有効なのです(FMDと同時に行う)。
また、侵襲性歯周炎(重度歯周病)の場合、家族内感染(伝播:でんぱ)という問題があります。
これは、歯周病治療により改善したとしても家族内(親しい方)に毒性の強いA.a.菌やP.g.菌を持った人がいると唾液から感染したり、共有する食器、箸等からも感染することが分かっています。
そのため、侵襲性歯周炎(重度歯周病)の場合、家族や親しい方からの感染を防止することが大切なのです。(家族間も含めた歯周病治療)アメリカ歯周病学会における進行した重度歯周病(侵襲性歯周炎)の定義として、家族内感染があげられているほどです。

6.歯周病細菌遺伝子(DNA)検査 リアルタイム PCR法

歯周病細菌遺伝子(DNA)検査 リアルタイム PCR法

ここまでの話しの中で進行した重度歯周病(侵襲性歯周炎)では、悪性度の強い歯周病細菌(P.g.菌 A.a菌等)が存在するため、治りにくいことを解説しました。
それは通常の歯周病治療では、悪性度の強い歯周病細菌は、その数を減らすことが難しく、感染率(転移率)も高いからです。

同じ進行状態の重度歯周病であっても悪性度の強い歯周病細菌が多く感染しているのか?
悪性度の高い歯周病細菌が少ないのか?によって治療法も違いますし、治り方も再発率も変わってきます。

そのため、治療開始前に悪性度の高い歯周病細菌に感染しているのかどうかを正確に診断することが重要になります。
そのための検査方法が、歯周病細菌遺伝子(DNA)検査リアルタイムPCR法です。
リアルタイムPCR法は、今まで検出が難しかったP.g.菌 A.a菌等の細菌をのDNAを短時間で増幅させることが可能になりました。
映画のジュラシックパークであった方法と同じような手法です。

7.PDT(a- PDT):最新の歯周病治療

先に説明しましたように進行した重度歯周病(侵襲性歯周炎)の場合、歯周病治療(SRP/スケーリング•ルートプレーニング)を行うことで、歯周病細菌は減少し、歯周ポケットの改善は認められるが、歯周病細菌の比率(割合)を改善させることは困難であり、歯周病細菌が残ることで、時間の経過とともに再発しやすいのです。
PDTとは、そうした歯周ポケット内に残存している歯周病細菌を減少させる治療法です。
PDTとは、Photo Dynamic Therapy(フォトダイナミックセラピー)の略で、日本語では光線力学療法と言います。
今までにない新しい歯周病治療です。
PDTの治療ですが、まず、歯周ポケット内部にバイオジェル(光活性剤)を入れます。
このバイオジェルは、歯周病細菌と結合(くっつく)します。
このバイオジェルは光感受性物質と言い、光を吸着すると化学反応が起こり活性酸素を発生させることができます。
ポケット内部に入れたバイオジェルに光(670nmの波長で220mWの低出力光エネルギー)を約1分間照射します。
この光は、発熱を起こすこともないため、痛みを感じることはありません。
光エネルギーを照射することにより、色素(バイオジェル)が結合した歯周病細菌は破壊されます。
このバイオジェル(色素)は、人間の身体の細胞には結合しません。
FMD法では、歯周ポケットの深い部位に対して、PDT法も併用していきます。

PDT(a- PDT):最新の歯周病治療

8.静脈内鎮静麻酔法を併用した FMD治療

FMD(Full Mouth Disinfection)法は、短期間(1日もしくは数日)で歯周病治療(SRP/スケーリング•ルートプレーニング)を行う方法です。
通常の保険診療で行うSRP/スケーリング•ルートプレーニングは、1回の診療時間が30~60分程度で行うことが一般的です。
全ての歯が存在する方の場合、これを4~6回に分けて行います。
FMDではSRP/スケーリング•ルートプレーニングを1日で行うため、1回の治療時間が長くなります。
長ければ3時間以上かかることもあります。
治療を受けられる患者様にとっても長時間お口を開けていることは大変なことです。
そのため、できるかぎりリラックスして治療を受けていただくために静脈内鎮静麻酔法でFMDを行います。
静脈内鎮静麻酔法とは、患者様が眠っている状態で治療を行う方法です。
治療開始前に静脈内鎮静麻酔を行うことで、FMD治療中は患者様は完全に眠っている状態で治療を受けることができます。
一度静脈内鎮静麻酔で治療を受けられた方は、治療中の怖さや大変さから開放されるため、次の治療を受けられる際には、ほとんどの場合、再度この麻酔方法をご希望されます。
特に歯科治療が怖い方には、かかせない麻酔方法です。
もちろん通常の麻酔でもFMDを行うことは可能です。

通常の麻酔で治療するのか?静脈内鎮静麻酔法で治療するのか?は、患者様のご希望によります。
ちなみに静脈内鎮静麻酔法は、経験豊富な麻酔専門医が対応しますので、ご安心下さい。

9. 症例報告 初診時 40歳 侵襲性歯周炎

症例報告 初診時 40歳 侵襲性歯周炎

10. 治療ステップ

治療ステップ

治療費

治療費については料金表ページをご覧ください。

料金表