メインテナンスが必要な科学的根拠(理由)

メインテナンスはなぜ必要なのでしょうか?

歯周病の治療が終了したとしても、きちんとした管理ができていないと 必ずと言ってもよい程再発してしまいます。
実際に歯周病で時間をかけて治療したにもかかわらず、再発をしてしまい抜歯をしなければならない状態になった方も多くいらっしゃいます。
歯周病の治療中 や 治療終了直後は 歯周病菌(歯周病を悪化させる問題の菌のこと)が非常に少なくなっています。
始めは、歯ブラシも非常に注意をし、時間をかけて行っていますが、だんだんおろそかになっていく場合もあり、ふたたび問題となる歯周病菌が繁殖しやすい環境となるため 再発を起こしてしまいます。
メインテナンスとは 定期的に口腔内を管理することにより、歯周組織の健康を維持していくことです。
アメリカの歯周病学会では 歯周病のメインテナンスを 『歯周病の治療の延長であり、新しいあるいは再発する異常や疾患を早期に発見し、治療しようとすることである』としています。
そして このメインテナンスの有効性や期間を科学的に実証する論文も多数あります。
以下には なぜメインテナンスが必要なのかということと、どれくらいの頻度で受ければ良いのかということを論文をもとに説明いたします。

メインテナンスの有効性 -メインテナンスに関する研究-

歯周外科処置後にメインテナンスを行わなかった場合どうなるか?歯周外科処置後にメインテナンス治療が行われなかったり、歯ブラシが不十分であれば、結果的に歯周病は再発することが多くの研究により実証されています。

研究 1.

AxellsonとLindhe(1981)は6年間にわたり歯周外科治療を受けた患者さんが適切なメインテナンスが行われないとどうなるかを調べた。
2~3ケ月の間隔でメインテナンスを受け、その時に診査と指導、および歯石除去等のクリーニングをした患者さん(メインテナンス群)と、メインテナンスを受けなかった患者さん(指導やクリーニングはしないで検査のみに来院してもらった)ではあきらかにメインテナンスを受けなかった患者さんは再発していた。

メインテナンスに関する研究

この論文の解説

『こうした報告は非常に多く、実際にメインテナンスを行わなかった患者さんの多くは再発をする傾向が非常に高いのが現状です。』

『どれくらいの間隔でメインテナンスは必要か?』 -メインテナンス期間に関する研究-

歯周外科処置後にメインテナンスを行わなかった場合どうなるか?歯周外科処置後にメインテナンス治療が行われなかったり、歯ブラシが不十分であれば、結果的に歯周病は再発することが多くの研究により実証されています。

研究 2.

WestfelとNyman(1983)により歯周外科処置後に専門家による歯面清掃を繰り返し行うことの重要性が報告された。
24名の患者さんは2週、4週、12週の間隔をもってメインテナンスグループにわけられた。その結果メインテナンス間隔が短いほど再発が少なかった。

この論文の解説

『メインテナンスの期間はその人の歯ブラシ(口腔管理のレベル)の程度や歯周疾患の程度により違いますが、特に問題が大きいとされる患者さんは来院期間を短くした方が再発のリスクは少ないことが実証されています。
当医院では歯周外科処置を行った患者さんおよびご自身では完全に口腔内のケアーができない方は基本的に1~3ケ月に1回、軽度の歯周病であり、口腔内のケアーも良くできている方は6ケ月に1回メインテナンスを行っています。』

『メインテナンスを行うことで歯周病で失った骨は再生する!』 -メインテナンスによる骨再生に関する研究-

研究 3.

『口腔管理がきちんと行われ、適切なメインテナンスを行うことで歯周病で失った骨は再生する!』という論文です。
RoslingとNyman(1976)らは口腔内の管理とメインテナンスがきちんと行われた場合、口腔内管理 およびメインテナンスがあまり行われなかった場合に比べて、骨の再生に効果があることを報告した。
また、逆に、歯周外科処置を行っても、その後の口腔内管理とメインテナンスが行われなかった場合は再発することをKeer(1981)が報告した。
この報告によると 歯周外科処置後5年の再検査の結果、口腔内管理とメインテナンスがきちんと行われなかった患者さんのうちその45%に失敗が認められたと報告した。

この論文の解説

『メインテナンスにおいて何年かおきにレントゲンで骨の再生状態を確認しますが、口腔内の管理(日常の歯ブラシの程度)やきちんとメインテナンスが行われなかった場合は明らかに骨の再生は認められない場合が多いです。
歯周病の治療が終わった患者さんには、メインテナンスは実際の治療以上に大切なことであり、ご自身の歯で一生過せるかどうかはこのメインテナンスにかかっていることを話します。
しかし、このメインテナンスは日本ではまだ一般的でないのが現状です。ご自身の歯で一生を過ごしたいと思われる方は必ずこのメインテナンスを受けて下さい。』

『メインテナンスを行うと本当に歯は保存できるのか?』 -メインテナンスにおける歯の保存率に関する研究-

研究 4.

例え進行した歯周疾患であっても、歯周治療を受け、適切な口腔内管理とメインテナンスを行った場合はかなりの確率で歯を維持することが可能であるという報告が多数ある。
0liver(1969)は5年から17年間(平均10.1年)のメインテナンスケアーを行っている歯周疾患患者さん 442人について報告した。
この研究によれば歯の喪失率は1.6%という非常に低いものであった。Ross(1971)らは2~20年メインテナンスを受けた患者さん180人について歯の喪失率は患者1人当たり0.78歯であった、と報告している。
同様に、口腔内管理をし、メインテンスをきちんと受ければ歯周疾患にかかった人でもメインテナンス期間中に失う歯の平均はHirschfeld (1978)は 1.8歯、Becker(1984)は0.72歯、Nabers(1988)らは0.29歯であったと報告している。

この論文の解説

『もともとの歯周疾患の程度やどこまで治療するかによってもその予後は異なりますが、口腔内の管理がきちんとできて、適切なメインテナンスを行えば、その予後はメインテナンスを受けない方よりはるかに良いことはまちがいないことです。
治療が終わった患者さんが良くする言葉があります。「また痛くなったり、問題があったら来ます。」もし本当に問題があってからくれば当然歯を抜歯したりすることになるのです。特に歯周病は自覚症状がある状態はかなり進行していることがほとんどです。
歯を抜きに歯科に来院するのか?歯を保存するために来院するのか?ということです。ご自身の歯はご自身で守ることができるのです。もう痛みがあってから治療するという考え方を変えてみてはいかがでしょうか?』