歯周病専門医サイトブログ

2012年1月の記事一覧
2012年1月30日

細菌の話し:その4

1/30(月曜日)です。

このブログは、歯周病に関するブログです。
毎週月曜日 にアップしています。

今日のテーマは、『細菌の話し:その4』になります。

このテーマは、シリーズになっていますので始めて見られる方は、是非1回目からご覧んになって下さい。
以下をクリックして下さい。
細菌の話し:その1

細菌の話し:その2

細菌の話し:その3

さて本日も難しい話しになります。
しかし、このシリーズを最後まで見ると “ 歯周病 ツウ ” になります。

虫歯は夜間作られる
前回のブログでは、虫歯細菌(好気性菌)の一部は、多くの糖(ショ糖)から(乳酸)という歯を溶かす成分をつくることを解説しました。
飲食物として糖が供給されなくなると 
糖(ショ糖)から合成され細菌内に貯蔵した
水溶性の粘液性多糖体(グルカン および フルクタン)を利用し、
持続して(乳酸)などを産生するため、虫歯(脱灰)が起きてしまいます。

虫歯が夜間作られるというのは、
食物がなくなった後でも 細菌内に蓄えられた粘液性多糖体をエネルギー源として利用しながら
酸(乳酸)を産生し続けるためなのです。

好気性菌 から 嫌気性菌への変貌 ー 嫌気性菌はどんどんと増殖していく ー

今までの3回のブログでも説明しましたように口腔内細菌には、
好気性菌酸素が存在する部位でのみ生きることが可能な細菌) と
嫌気性菌(酸素が存在する部位では生きるのが困難な細菌)
が存在します。
歯周病細菌として問題なのは、嫌気性菌です。
今までのブログの内容をまとめると
細菌の増殖の成り立ちとして
歯の表面(歯根面)に付着したペリクル表面に好気性菌が増殖します。
そして、食物のショ糖を利用して粘液性多糖体が作られたり、
細菌の繊毛 等により
細菌が凝集してきます。
そしてバイオフィルムが形成されます。
すると バイオフィルム中では、どんどんと嫌気性菌の増殖が多くなってきます。
好気性菌から嫌気性菌への変化です。

また、歯肉のにプラークが沈着してくると 歯肉に炎症(腫れる)が起こります。
歯肉が腫れると歯周ポケット内部から歯肉溝滲出液(しにくこうしんしゅつえき)が大量に分泌されるようになってきます。
嫌気性菌にとって歯肉溝滲出液(アミノ酸)は、栄養源ですから 栄養源を得た嫌気性菌はどんどんと増えていきます。
歯周ポケット内部のアミノ酸は、唾液中のアミノ酸より20〜25倍多く、
歯周病細菌にとっては食事に困らない快適な環境と言えます。
                   *Fine D H:Periodontol 2000,1995
また、嫌気性菌により歯周組織は破壊され、歯周ポケットがどんどんと深くなりますので、酸素の嫌いな嫌気性菌にとっては絶好の環境になってくるのです。

細菌の増殖は、十分な栄養があれば、1時間もたたないうちに2倍となります。


歯周病の原因となる代表的な嫌気性菌
慢性歯周炎の原因となる代表的な嫌気性菌には以下の3種類があります。
P g 菌:ポリフィロモナス ジンジバリス菌(Porphyromonas gingivalis)
T f菌:タネレーラ フォーサイシア菌(Tannerella forsythia)
T d菌:トレポネーマ デンティコーラ菌(Treponema denticola)
         *細菌の名称は良く変わります 上記は2011年時点での名称です
これらの嫌気性菌の病原性は毒素によって決まります。
この毒素には 外毒素内毒素 があります。

外毒素は、細菌の内部から分泌されます。
タンパク質を分解する酵素を産生し、
歯周組織を構成するコラーゲン組織を破壊します。
コラーゲン組織が破壊されると歯肉は出血しやすくなります。
外毒素として有名なのが 赤痢菌 や 破傷風菌 の神経毒、
コレラ菌 や 大腸菌 の腸管毒です。

また 内毒素は、細菌の構成成分である外膜です。
以下のような多彩な生理活性があり、さまざまな病原性に関わっています。
・ 発熱性
血液を凝固させ血管障害を起こす
細胞障害作用 
骨吸収を起こす
・ 血液を介して内毒素が侵入くるとShwartzman反応という強い炎症反応がみられる
・ 一度に大量の内毒素が入り込むと内毒性のショック死を起こすことがある

上記以外にも まだまだ さまざまな病原性にかかわっています。


ますます難しい話しになってきました。
次回も細菌の話しの続きです。

次回のブログは、2月 6日(月)になります。



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2012年1月23日

細菌の話し:その3

1/23(月曜日)です。

このブログは、歯周病に関するブログです。
毎週月曜日 にアップしています。

今日のテーマは、『細菌の話し:その3』になります。

今日も難しい話しになります。
このシリーズを始めて見られた方は、
是非 2回前に戻り細菌の話し:その1からご覧になって下さい。

細菌の成り立ち
口腔内細菌は、単独で悪さをするというよりは、集団で悪さをします。
この細菌の集団をバイオフィルムと言います。
それではバイオフィルムの成り立ちについて解説します。

歯の表面(歯根面)には、ペリクル(唾液の糖タンパク質)という薄い膜が存在します。
               *Marsh P D,et al:J Ind Microbiol,1995
これは、細菌(好気性菌)が出す(乳酸)から歯を守る重要な働きをしているのです。
虫歯細菌(好気性菌)は、(乳酸)という歯を溶かす成分を出します。
(乳酸)より歯が溶けていくのです。
ペリクルは、虫歯細菌による酸から歯を守るバリアーと思って下さい。
しかし、バリアーである反面 細菌が付着しやすくなっているのも事実です。

また、歯肉縁プラーク細菌(好気性菌)の中には 食物中のショ糖から粘液性多糖体(水不溶性グルカン)を作るものが多くあります。
口腔内細菌の中には、細菌自体が歯面に付着しやすい構造(線毛 等)を持っているものもありますが、歯面に付着しにくい細菌は粘液性多糖体(水不溶性グルカン)を介して凝集していきます。

また、細菌同士が情報伝達を行い、細菌が凝集するのです。
細菌同士が手に手をとって集まる状態を共凝集と言います。

まとめると以下のようになります。
歯の表面(歯根面)には、ペリクル(唾液の糖タンパク質)という薄い膜が形成されます。
このペリクルに付着しやすい細菌(好気性菌 Streptococcus、 Actinomyces)が住みつきます。
この時の細菌(好気性菌)は、歯周病にとって悪性度の低い菌と思って下さい。
さらに この細菌(好気性菌)に嫌気性菌( Fusobacterium nucleatum )が付着します。
              *Kolenbrander P E:J Applied Bacteriol,1993
この細菌( 嫌気性菌:Fusobacterium nucleatum )に
歯周病に悪性度の高い細菌
P g菌:Porphyromonas gingivalis 
T f菌: Tannerella forsythia
T d菌 : Treponema denticola
が付着していきます。
            *Socransky S S,et al:J Clin Periodontol,1998
善玉菌、仲介菌、悪玉菌の順番に共凝集していくのです。
こうして細菌の塊ができていくのです。
細菌が集まった状態をバイオフィルムと言います。
         *細菌の名称は良く変わります 上記は2011年時点での名称です


バイオフィルムは細菌の集合体
先に説明しましたように
多くの細菌が集まった状態をバイオフィルムと言います。
                 * Donlan R M,et al:Clin Microbiol Rev,2002

バイオフィルムを他の例えで表現すると
台所のシンクをきれいに洗っていないと
「ヌルヌル ヌメヌメ」としてきます。
この「ヌルヌル ヌメヌメ」バイオフィルムなのです。
バイオフィルムは細菌の住処です。
バリアーと言ってもいいでしょう。

このバイオフィルムがあると外来からの影響を受けにくくなります
通常口腔内細菌が繁殖すると
唾液により洗い流されたり
唾液の抗菌作用により
細菌が繁殖するのが抑えられます。
しかし、バイオフィルムの中に生息する細菌は、
唾液の影響を受けにくくなるため
バイオフィルムの中で細菌は増殖していくのです。

飲食後(食物を摂取後) 虫歯細菌(好気性菌)の一部は、
多くの糖(ショ糖)から(乳酸)という歯を溶かす成分をつくります。
バイオフィルムというバリアで囲まれた中に生息する細菌は、産生した酸(乳酸)の拡散を防ぎ唾液に流されないため局所に留まります(停滞する)

そのため、虫歯予防をするためには、
バイオフィルムという細菌の住処を破壊することが重要なのです。
簡単に言えば歯磨きを行うことです。

今日も少し難しかったですね。
次回も本日の続きです。

なぜ夜間に虫歯は作られるのか?
細菌の増殖の仕方!

という話しになります。



次回のブログは、1月30日(月)になります。



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2012年1月16日

細菌の話し:その2

1/16(月曜日)です。

このブログは、歯周病に関するブログです。
毎週月曜日 にアップしています。

今日のテーマは、『細菌の話し:その2』になります。

前回から始まったこのシリーズです。
かなり難しい話しになっていますが、
「なぜ歯周病になるの?」
ということを知るには、細菌を知らないといけないのです。

それでは、今日の話しになります。

3.好気性菌 と 嫌気性菌とは?
口腔内の細菌を理解するためには、好気性菌嫌気性菌 という2つの細菌を知ることが必要です。
口腔内には大きく分けて
好気性菌(こうきせいきん) と
嫌気性菌(けんきせいきん)
が存在します。
好気性菌は、酸素が存在する部位でのみ生きることが可能な細菌です。
嫌気性菌は、酸素が存在する部位では生きるのが困難な細菌です。

前回のブログでは、デンタルプラークには 多くの細菌が生息していると説明しましたが、
歯周病で問題となる 歯肉の中の歯周ポケット 内部に存在するデンタルプラークの中に生息する細菌のほとんどは、嫌気性菌なのです。
嫌気性菌が歯周病の原因となるのです。
reation2

歯周ポケットについて分からない方は以下のページをご覧になって下さい。
      歯周ポケット

つまり歯周ポケット の内部には 酸素が嫌いな嫌気性菌 が生息しているのです。

「歯周ポケットの中は酸素がないの?」
ということですが、
歯周ポケット 内部の酸素濃度1%以下です。
(ちなみに私達が生活する空気中の酸素濃度は21%です)
歯周ポケットは、酸素が嫌いな嫌気性菌(歯周病にとって悪い菌)にとってはとても住み心地が良い場所なのです。

喫煙者は、非喫煙者と比較して、
歯周病の進行は 6倍以上も早い という論文データがあります。
この理由(原因)の一つとして 喫煙者の歯周ポケット内部の酸素濃度は正常状態(非喫煙者)の半分程度というデータからも 喫煙者は嫌気性菌が繁殖しやすい環境であることが分かります。

4.細菌の栄養源
口腔内の細菌はなにを栄養源として生きているのでしょうか?
口腔内細菌が必要とする栄養源は、細菌の種類により非常に複雑なものがあります。

私達が口腔内に見える汚れを「歯肉縁プラーク」と言います。

それに対し 歯周ポケット 内部に存在する汚れを「歯肉縁プラーク」と言います。

口腔内に見える汚れの中に生息する細菌(歯肉縁プラーク細菌)の主な栄養源は唾液中のアミノ酸です。
歯肉縁上プラーク細菌とは、好気性菌のことです。
酸素が存在する部位でのみ生きることが可能な細菌ですね。
また、好気性菌は、唾液以外にも 食物と共に取り込む ショ糖 や ブドウ糖、果糖 を利用する細菌も多く存在します。
決して細菌(好気性菌の多くは)は、食物を栄養源としているのではないのです。
主な栄養源は唾液なのです。

しかし、唾液中には抗菌性物質が存在しており、唾液は細菌を殺す働きもあるのです。
唾液は細菌を退治する非常に重要な面(抗菌性)を持っていると共に
唾液中のアミノ酸は、細菌の栄養源ともなっているのです。

それに対して 歯周ポケット 内部に生息する細菌(歯肉縁プラーク細菌:嫌気性菌)の主な栄養源は歯肉溝滲出液(しにくこうしんしゅつえき)のアミノ酸です。
                           *Goodson J M:Periodontol 2000,1994
歯肉溝滲出液とは、歯周ポケット 内部からでる液体のことです。
正常状態では、歯周ポケット内部を1分で満たす程度の割合で分泌されています。

歯肉溝滲出液は、単に嫌気性菌の栄養源になっているだけではありません。
歯肉溝滲出液は、歯周ポケット内部に侵入してきた細菌を洗い流す働きがあります。
また、この歯肉溝滲出液には、細菌を撃退する成分(抗菌成分)も含まれています。

例えて言うと、
鼻の穴の中に外来から侵入してきた物に対して、鼻汁が出て洗い流したり、
目にゴミが入った場合には、涙が出て洗い流すのと同じようなことです。
生体の防御反応といってもいいでしょう。

しかし、この防御としての歯肉溝滲出液は、細菌の栄養源ともなるのです。
また、細菌の中には、他の細菌が出す代謝産物である乳酸を利用するものもあります。
もちろん歯周ポケット内部の細菌とは、酸素が嫌いな嫌気性菌(歯周病にとって悪い菌)のことです。

今日も難しい話しになりましたね。

次回も細菌の話しになります。
このシリーズを全て読むと かなりの歯周病ツウになります。

次回のブログは、1月23日(月)になります。



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2012年1月9日

細菌の話し:その1

2012年 1/ 9(月曜日)です。
今年最初の歯周病ブログです。

このブログは、歯周病に関するブログです。
毎週月曜日 にアップしています。

今日のテーマは、『細菌の話し:その1』になります。

今日から始まる話しは、少し難しい内容です。
細菌の話しです。

なぜこのような話しをするのかと言いますと
虫歯 や 歯周病 は、細菌がいなければ起こらない病気であり、
この細菌をコントロールすることが予防につながるのです。

それでは いくつかの項目に分けて始めます。

1.私達の身体は細菌だらけ!
人間は一生の中で無菌の状態でいられるのは胎内で過ごす期間だけです。
出生するとすぐに細菌感染を起こし、生体の各所で菌の増殖が始まります。
一度細菌感染した部位は一生排除されずに定着するものも少なくないのです。
つまり 私達の生体は細菌と共存している状態なのです。

2.歯周病は感染症!
歯周病細菌はどこから感染すると思いますか?
例えば、侵襲性歯周炎(しんしゅうせいししゅうえん)の原因菌とされる
Aa菌(Aggregatibacter actinomycetemcomitans)は、
大人から大人へと感染することはなく、
まだ 永久歯が生えそろわない 10歳頃に大人から子供へ感染することが研究により分かっています。
                             * Slos J:Scand J Dent Res,1976

これは子供の口腔内は まだ細菌のグループが安定していないため、外来から感染を起こします。
また、抗生剤を長期服用していた場合などは、口腔内の健康な細菌グループがいったんいなくなるため、新たに細菌の環境がそろう前に細菌に感染する可能性があります。

 * 細菌の名称はよく変わります 上記は2011年時点での名称です。
   旧名は、Actinobacillus actinomycetemcomitansです。
 * 1999年以前に思春期前歯肉炎、若年性歯周炎、急速進行性歯周と
  呼ばれていたものを まとめて侵襲性歯周炎と分類しています。

その他の歯周病細菌についても夫婦間 や 親子間 で感染していることが
多くの研究で明らかにされています。
                       * Greenstein G, et al:J Periodontol,1997
                       * Petit M D A,et al:J Periodont Res,1993

唾液を介した感染が主なルートであれば、歯周病治療後の再感染を防止したり、歯周病細菌を持っている人が そうでない人に移さないようにすることは重要です。
歯周病治療を行う場合には、ご本人の治療を行うだけでなく、生活を共にしている家族全ての人の治療が必要ということになります。

3.口腔内には細菌がいっぱい!
人間の身体にはさまざまな部位で細菌が生息しています。
口腔内に生存する細菌の種類500〜700種類と言われています。

口腔内に存在するデンタルプラーク中の細菌はものすごい数です。
デンタルプラーク1mg当たりの細菌の数は1億個も存在します。
デンタルプラークは細菌の塊なのです。
「えーそんなに細菌がいるの?」
と思われるかと思います。
しかし、口腔内に生息する細菌が全て問題なのではありません。
正常細菌叢(せいじょう さいきんそう)と言われる細菌は、健康な身体に住み着く細菌です。
これらの正常細菌叢は、外部からの絶えまなく侵入してくる病原微生物からの攻撃を防御しているのです。
細菌が存在することは決して悪いことではないのです。

外出から帰ってきたり、食事の前に手を洗うことは非常に有効です。
しかし、これにより細菌がいなくなるわけではありません。
その理由について解説します。
例えば、皮膚に存在する常在細菌は、1 cm2当 たり10.000個存在しています。
これらの常在細菌は、適切な手洗い(水、石けん等の使用)で90%以上 除去されます。
しかし、除去される細菌は表層のみであり、毛嚢(もうのう)や汗腺(かんせん)の深部に定着している細菌は容易に除去できないため、数時間経つとこれらの細菌が増殖し元の状態に戻ってしまいます。

ただし、これが悪いわけではありません。
常在細菌は常にバランスを保っており、特定の細菌が増えないようにコントロールされているのです。
しかし、衛生面を極度に意識し、過剰な消毒を繰り返すことによりそのバランスが崩れて悪影響を及ぼすこともあります。

口腔内の細菌もそうです。
先程説明したように 口腔内の歯垢(しこう)には、1mg当たりの細菌の数は1億個も存在します。
唾液には、1ml当たり1.000.000〜10.000.000.000個 存在しています。
これは正常な状態なのです。
問題となるのは、細菌のバランス種類 なのです。

少し難しかったですね。
しかし、細菌を知ることが、虫歯 や 歯周病 を知ることになります。

次回のブログは、1月16日(月)になります。
次回も本日の続きです。



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