歯周病専門医サイトブログ

2015年1月19日

歯周病細菌 除菌 治療

2015年 1月19日(月曜日)です。

今日のテーマは、『歯周病細菌 除菌 治療』になります。

2月、3月と発表があり、
データをまとめる仕事が続きますので、
歯周病ブログは、少しの間休みになります。
そこで、今回のブログは ちょっとまとめて長めにアップします。


先週は、
歯周病細菌遺伝子(DNA)検査リアルタイム PCR法
について解説しました。

本日は、昨年末にづっと掲載していましたFMD法について
まとめたので、それをアップしたいと思います。

かなり長い話になります。


FMD治療とは、1995年にQuirynen Mらが提唱した歯周病の治療法です。

一般的に行われている歯周病治療ルートプレーニング
( 歯周ポケット内部に存在する汚れや歯周病細菌を除去する治療)は、
4〜6回に分けて行われます。

こうした一般的に行われる 複数回(4〜6回)に分けて行う
歯周病治療(ルートプレーニング)は、
まだ 治療を行っていない部位から 治療が完了した部位へと
細菌が感染(転移)することが分かっています。

特に 重度歯周病(侵襲性歯周炎)で起こる可能性が高いとされています。

侵襲性歯周炎(しんしゅうせい ししゅうえん)の場合、
悪性度の強い歯周病細菌(P.g.菌 や A.a.菌…等)が非常に多く検出されます。

これらの悪性度の強い歯周病細菌は、
通常の4〜6回に分けて行われる歯周病治療では 感染(転移)してしまうため、
1回(1日) もしくは 1週間以内に 
歯周病細菌を除去(ルートプレーニング)すると同時(FMD治療)に
舌 や 口腔粘膜 等に付着している歯周病細菌を
抗菌薬(CHX抗菌うがい薬、3DS法の使用) を用いて
除去 あるいは 抑制させて、感染(転移)をさせない治療法です。


現在では FMDと同時に 悪性度の強い歯周病細菌に効果の高い抗菌薬を服用
して除菌することが行われています。(内科的歯周病治療)

以下では上記の内容を詳細に解説します。



始めに FMD治療のポイントを列挙します。

ポイント1:歯周病をより効果的に治す(進行した歯周病を最大限改善)

ポイント2:通院回数を極力少なくしたい方、忙しい方に最適

ポイント3:最新の歯周病治療(PDT、エムドゲイン法、GTR法、3DS)で対応

ポイント4:歯科恐怖症の方に最適(静脈内鎮静法で眠った状態で治療が可能)


次に一般的な歯周病治療について解説します。

私自身 歯周病専門医として、長く歯周病治療に携わってきました。

歯周病は軽度であれば、 さほど治療回数も少なく(短期間)、
簡単に治療を終了することが可能です。

しかし、進行した歯周病(侵襲性歯周炎)であった場合には、
治療回数も多く(長期間)なることが多いです。
 
歯周病の治療として、
「SRP/スケーリング•ルートプレーニング」 という治療法があります。   
歯周病治療の基本中の基本です。
 
「SRP/スケーリング•ルートプレーニング」とは、
歯と歯肉の隙間(歯周ポケット)に器具を挿入し、
歯肉の内部に侵入した汚れ(歯石) や 細菌を取り除く治療です。

深い歯周ポケットの場合、歯肉に麻酔を行い、
歯石の除去 および 歯根面の汚染物質を取り除く治療法です。

以下の写真のような方法です。
pmtc3



通常 保険診療で行う 「SRP/スケーリング•ルートプレーニング」にかかる治療時間は、
一度に行う歯数 や 部位(前歯か奥歯か)、
歯周病の進行程度 等に よっても大きく変わりますが、 
約30〜60分程度です。

この治療を約4〜6回に分けて行うのが一般的です。
(歯の残っている数等によっても変わります)

もし、1週間に1回の来院が可能であったとしても
6回に分けて「SRP/スケーリング•ルートプレーニング」を行うと
1ヶ月半の治療期間がかかります。

もちろんこれは、「SRP/スケーリング•ルートプレーニング」だけにかかる治療期間のことです。

もし、連続して通院が難しい場合で、2〜3週間に1回の通院であった場合には、
口腔内全ての「SRP/スケーリング•ルートプレーニング」を行うためには
約3ヶ月かかることになります。



こうしたことは、治療回数が長くかかるという問題だけでなく、
進行した重度歯周病(侵襲性歯周炎:しんしゅうせい ししゅうえん)の場合、
治療効果にも大きな影響を及ぼす可能性があります。

4〜6回に分けて行う 一般的な歯周病治療の場合、
最初(1回目)に 「SRP/スケーリング•ルートプレーニング」 を行った部位では
当然 感染(歯周病細菌)は減少します。

しかし、まだ 歯周病治療を行っていない部位では、
歯周病細菌が残っているわけですから
そこから 最初にSRPを行った部位に再度感染が起こってしまうのです。

歯周病細菌の転移(伝播:でんぱ)が起こるのです。

そのため、進行した重度歯周病の場合(侵襲性歯周炎)の場合、
「SRP/スケーリング•ルートプレーニング」は
短期間で治療を行うことで効果があると言えるのです。

そこで 短期間(1日 もしくは 数回に分けて)で全ての歯周病に感染した歯に対して、
「SRP/スケーリング•ルートプレーニング」を行うことで
歯周病細菌を他の歯に転移させないようにする治療方法を
F M D (Full Mouth Disinfection)法と言います。


これでF M D 治療がなんとなく分かったと思われます。


一般的な慢性歯周炎の場合、SRP/スケーリング•ルートプレーニングを行うことで
歯周ポケット内の細菌(歯周病細菌)の数は劇的に減少します。

しかし、進行した重度歯周病(侵襲性歯周炎:しんしゅうせい ししゅうえん)の場合、
通常のSRP/スケーリング•ルートプレーニングを行うと 
細菌のは減るものの、
治療後、約4週間程度で 細菌叢(細菌の割合:比率)は
元に戻ってしまうことが
多くの研究論文で分かっています。


つまり、進行した重度歯周病(侵襲性歯周炎)では、歯周病治療後に 
細菌のは減ってはいくものの 
毒性の強い細菌の割合(比率)は 大幅には変化しないのです。

以下は、慢性歯周炎(一般的な歯周炎) と 重度歯周炎(侵襲性歯周炎)に対して
SRP を行った後の 歯周病細菌の変化(細菌の比率:割合)をみたデータの一つです。

P.g. 菌(オレンジ色) と 
P.i.菌(紫色) と 
T.f.菌(緑色)は、
毒性の強い歯周病細菌です。

この細菌が存在する場合、歯周病が進行していると言えます。
スライド1


治療前には 慢性歯周炎 と 侵襲性歯周炎 ともに
毒性の強い P.g. 菌 が認められます。

歯周病治療後(SRP後)、

慢性歯周炎では毒性の強い細菌(P.g. 菌 、 P.i.菌 、 T.f.菌)の
減少が認められますが、

侵襲性歯周炎の場合、
治療後に毒性の強い細菌(P.g. 菌 、 P.i.菌 、 T.f.菌)の割合に
変化がないことが分かるかと思います。(悪性度の高い細菌比率が変化していない)




それでは、進行した重度歯炎( 侵襲性歯周炎 )の場合、
どうしたら 毒性の強い歯周病細菌を減らすことができるのでしょうか?

まず、感染を抑えるために短期間で SRP/スケーリング•ルートプレーニング を行います。

つまり F M D (Full Mouth Disinfection)法 を行うのです。

これは 細菌の転移(伝播:でんぱ)を防ぐためです。


次に 毒性の強い歯周病細菌を除菌するための抗菌薬を服用します。

通常は、 SRP/スケーリング•ルートプレーニング を行う 治療前から抗菌剤を服用します。

抗菌剤による 毒性の強い歯周病細菌の除菌を行うのです。


以下は、先に解説したデータの続きで、抗菌剤の効果をみたデータです。

P.G 菌(オレンジ色)は毒性の強い歯周病細菌で、
青色の細菌は毒性の低い歯周病細菌です。

抗菌剤を併用すると 毒性の強い歯周病細菌の比率は劇的に少なくなることが認められました。

スライド2



次に 抗菌薬以外の除菌療法(3DS法、CHX洗口法)について解説します。

歯周病細菌は、歯周ポケット内部のみに生息しているわけではありません。

歯周ポケット以外にも 
唾液中 や 
口腔粘膜、
舌、
扁桃腺 
にも生息していることが多くの研究で分かっています。

そのため、歯周ポケットのみを対象とした歯周病治療(SRP)を行うだけでなく、
口腔内全体の除菌も併用して行うことが有効なのです。

その方法が 3DS法 という方法です。

具体的な3DSの方法として、
歯形を取り、患者様個人に合わせたマウスピースを作製します。

このマウスピースの内部に抗菌性の高い薬剤を入れて 除菌 するのです。

また、治療期間中は、食後に抗菌性の高いうがい薬を使用します。

こうしたことを徹底して行うことで、
歯周病細菌を除菌し、治療した部位への再感染を最小限に防ぐことを行います。



さらに歯周病細菌を減らす方法について解説します。

PDT治療という治療法です。

PDTとは、
Photo Dynamic Therapy(フォトダイナミックセラピー)の略で、
日本語では光線力学療法と言います。

今までにない新しい歯周病治療です。

PDTの治療ですが、
まず、歯周ポケット内部にバイオジェル(光活性剤)を入れます。

このバイオジェルは、歯周病細菌 と結合(くっつく)します。

このバイオジェルは光感受性物質と言い、
光を吸着すると 化学反応が起こり活性酸素を発生させることができます。

ポケット内部に入れたバイオジェルに光(670nmの波長で 220mWの低出力光エネルギー)を
約1分間照射します。

この光は、発熱を起こすこともないため、痛みを感じることはありません。

光エネルギーを照射することにより、
色素(バイオジェル)が結合した歯周病細菌は破壊されます。

このバイオジェル(色素)は、人間の身体の細胞には結合しません。

FMD法では、歯周ポケットの深い部位に対して、PDT法も併用していきます。
スライド1
スライド2



次に麻酔についてです。

何度も説明しますが、F M D (Full Mouth Disinfection)法は、
短期間(1日 もしくは 数日)で
歯周病治療( SRP/スケーリング•ルートプレーニング )を行う方法です。

通常の保険診療で行う SRP/スケーリング•ルートプレーニングは、
1回の診療時間が30〜60分程度で行うことが一般的です。

全ての歯が存在する方の場合、これを4〜6回に分けて行います。

F M D では SRP/スケーリング•ルートプレーニング を1日で行うため、
1回の治療時間が長くなります。

長ければ3時間以上かかることもあります。

治療を受けられる患者様にとっても長時間お口を開けていることは 大変なことです。

そのため、できるかぎり リラックスして治療を受けていただくために
静脈内鎮静麻酔法で F M D を行います。


静脈内鎮静麻酔法とは、
患者様が眠っている状態で治療を行う方法です。

治療開始前に静脈内鎮静麻酔を行うことで、 F M D 治療中は患者様は完全に眠っている状態
で治療を受けることができます。

一度 静脈内鎮静麻酔で治療を受けられた方は、
治療中の怖さ や 大変さ から開放されるため、
次の治療を受けられる際には、ほとんどの場合、再度この麻酔方法をご希望されます。

特に歯科治療が怖い方には、かかせない麻酔方法です。

もちろん 通常の麻酔でも F M D を行うことは可能です。

通常の麻酔で治療するのか? 
静脈内鎮静麻酔法で治療するのか? 
は、患者様のご希望によります。

ちなみに 静脈内鎮静麻酔法は、経験豊富な麻酔専門医が対応しますので、ご安心下さい。




次に症例を見ていきましょう!
患者様は40歳です。

40歳の時点で歯周病が非常に進行しており、
侵襲性歯周炎と診断しました。

以下の上の写真が初診時で
下の写真が治療終了後です。

スライド1



次に治療のステップについて解説します。
スライド1



最後に治療についてです。
治療費

1.歯周病細菌遺伝子(DNA)検査:リアルタイムPCR法                    
  • 2菌種(例:P.g.菌 A.a.菌)   : 10.000円
  • 3菌種(例:P.g.菌 T.d.菌 T.f.菌) : 15.000円
  • 5菌種例:(P.g.菌 T.d.菌 T.f.菌 A.a.菌 P.i.菌)         
                         : 20.000円
        *できるかぎり5菌種測定した方がより詳細な結果がわかる
       *検査1回分の費用
       *細菌検査は治療前後の2回は必要 


2.FMD
         1歯  : 5.000円
             *抗菌薬を含む

3.CHX抗菌うがい薬
          1箱  : 1.000円
             *通常1箱の使用

4.3DS法            
           上下顎 マウスピース  1個つづ合計: 20.000円
           薬剤           1箱 : 3.000円
            *通常1箱の使用

5.PDT         
           1歯1回分 : 2.000円
             *FMDと併用すると効果的

6.静脈内鎮静麻酔
           1回分 : 40.000円
            *治療歯数が多い場合、治療時間が1時間以上かかる場合
             治療に不安がある方、眠っている間に治療を終えたい方に最適


 *上記はFMD治療の費用であり、
  初診時の検査(レントゲン撮影、歯周ポケット検査)、FMD後の歯周外科治療、
再生治療(GTR法、エムドゲイン法)は含まれていません。
  消費税は別途必要



次回のブログはおそらく3月中頃になるかと思います。

暫く休みになります。


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