サイナスリフト法

治療期間はかかりますが、確実な方法と言えます。

上顎と上顎洞との距離が狭く、そのままではインプラントは不可能な場合で、ソケットリフト法では対応できない骨の高さが4mm以下の場合に行う方法です。
一般的にサイナスリフト法と同時にインプラントの埋入は行わないため、サイナスリフト後に骨の増大と安定が完了するまで4~6ケ月程度の期間を待たなければなりません。しかし、上顎の骨の高さが4mm以下の場合にはこの方法以外にインプラントを行うことは不可能です。

サイナスリフト法

1. 骨の高さが4mm以下の場合、サイナスリフト法を行う

骨の高さが4mm以下の場合、サイナスリフト法を行う

骨の高さが4mm以下の場合、ソケットリフト法でも対応できないため、サイナスリフト法を行います。
ソケットリフト法とことなり、下から骨を押し上げるのではなく、骨の高さのない横から移植材を入れ、骨の高さを増大します。

2. 骨の高さを増大

骨の高さを増大

骨移植※を行うことにより、上顎洞は点線の位置から押し上げられインプラントを行うのに十分な高さを得ることができる。
その後4~6ケ月程度骨が安定するのを待ちます。

3. インプラントを埋入

インプラントを埋入

サイナスリフトより4~6ケ月後インプラントを埋入します。

骨移植とは?

サイナスリフトを行う場合に骨の高さを増大するためにご自身の骨を他部位から採取し、上顎洞を押し上げる材料として使用する方法です。
骨移植と聞くと恐い感じがするかもしれませんが、局所麻酔で行うことができますし、最も成功率が高い方法であることがわかっています。また狂牛病やヤコブ病の原因とされている他動物の移植材(骨)を使用しないため安全性が高い方法です。
当医院ではこれにPRP(下記参考リンク「最新医療:PRP法」参照)を複合して使用しています。
このPRP法は現在非常に注目されている骨を増大を促進させる方法です。

治療前(サイナスリフト前)

治療前

上顎洞が下がっており、骨の高さは上顎洞まで 3mm程度しか存在しない。これではインプラントはまったくできない。※ 黄色い線が上顎洞の位置である。

治療後(サイナスリフト後)

治療後

上顎洞は大幅に挙上され、インプラントを行うのに十分な高さが得られた。

参考リンク

サイナスリフト症例

初診

右上奥歯に歯がないため、同部にインプラントを行うことにしました。
しかし、上顎洞が存在するため、インプラントを埋入するための場所がありません。そこでサイナスリフトを行いインプラントを埋入する計画をたてました。

初診

治療前レントゲンシュミレーション

上顎洞(白矢印)が存在するためインプラントが入る高さ(黄色矢印)が3~4mm程度しかありません。そのまま埋入するとインプラントが上顎洞に突抜けてしまいます。そこでサイナスリフトにて上顎洞を15mm程度挙上して12mmの長さのインプラントを埋入する計画をたてました。

治療前レントゲンシュミレーション

治療後

12mmの長さのインプラントを行うことができました。

治療後

サイナスリフトの成功率

サイナスリフト法は1977年にGeigerらが報告をしたもので、サイナスリフト(Sinus Lift)の『サイナス』とは上顎洞のことで上顎洞を『リフト』(挙げる)という意味です。先で説明したソケットリフトもこのサイナスリフトの中に含まれます。しかし、現在サイナスリフトというと上顎洞の頬側壁を開窓(移植骨を入れる穴を開けること)して骨の移植を行う“Caldwell-Luc法”が幅広く応用されています。ではその方法は本当に安全で効果があるのでしょうか?
サイナスリフトの臨床成功率に関するデータは数多く報告されています。その中で1996年にアメリカのマサチューセッツ州で行われた『Report of the Sinus Consensus Conference of 1996』という学会での報告を紹介します。
『1995年の時点でインプラント治療が終了してから3年以上経過している患者さんがこの研究の対象となりました。対象となったインプラントは2997本でした。そのうち失敗は299本で、成功率は90%であった。』と報告されました。

結論

サイナスリフト法はインプラントを埋入する骨の高さがない場合非常に効果がある方法です。言いかえれば骨の高さがない場合はサイナスリフトを行わないとインプラントはできないということにもなります。上記の報告では90%の成功率となっていますが、失敗の多くはインプラントと骨が結合(くっつく)するまでの治癒期間に無理な力が加わったり、術前の診査が不十分であった場合に起こるもので、十分な診査のもと治療がおこなわれればもっと成功率は高いものであると考えられます。しかしこの治療法の最大の欠点は外科的侵襲が大きく、治療後ある程度の期間腫れを伴うことが多いことです。また治療期間も6ケ月から1年と長くかかることも欠点の一つとなっています。そうしたことから従来サイナスリフト法で行っていたケースも外科的侵襲の少ないソケットリフト法を選択するケースも増えてきています。以下はソケットリフト法とサイナスリフト法の比較です。

利点 欠点
ソケットリフト(オステオトーム法) 術式が比較的簡単
感染のリスクが低い
外科的侵襲が低い
骨の高さが5mm以下の場合は適応できない。
サイナスリフト(Caldwell-Luch法) 治療期間短い
骨の高さがほとんどないケースでも可能
外科的侵襲が大きい
治療期間が長い