インプラント治療
インプラントと天然歯は連結可能か?
どのような場合、インプラントと天然歯を連結するこがあるのでしょうか?
			例えば、奥歯が2本欠損していたとします。
			このような場合インプラントで治療を行うと2本のインプラントが必要になります。
			当然ですが…
			しかし、一番奥に1本のインプラントを埋入し、欠損の手前に天然歯が存在すれば、インプラントと天然歯を連結することができます。
			これがインプラントと天然歯によるブリッジです。
			特に欠損の手前の歯がすでに削られているような場合には可能な方法と考えられます。
			またこの方法ですとインプラントを2本埋入するより治療費が抑えられます。
		
インプラントと天然歯の連結は正しい治療法なのでしょうか?
			一般的にインプラントと天然歯を連結(つなぐ)することはありません。
			何故かと言いますと、天然歯は噛むと若干動きます。これは『歯根膜』というクッションのようなものが歯の根の周りに存在するためです。
			このようなクッションが存在する理由ですが、噛む力は非常に強いものです。特に就寝時にはかなり強い力で噛みしめる方がいらしゃいます。
			いわゆる『歯ぎしり』と言われるものです。
			『歯ぎしり』はどんな方でも大抵します。
			ギリギリと音として聞こえる方もいれば、そうでない方もいらしゃいます。
			この『歯ぎしり』の力は強く、『歯根膜』というクッションがないと歯はダメージを受けてしまいます。
			いわゆる『打撲』のような状態です。
			『歯根膜』があるために歯は噛んだ時に上下、左右に動くのです。
			簡単に言えば『歯根膜』は歯にダメージが加わらないように噛む力を調整しているのです。
			それに対しインプラントは骨と完全に結合しているため動きません。(厳密には骨のたわみの分だけ若干は動きますが、臨床的には動かないと思っていただいてOKです)
			そのため動く天然歯と動かないインプラントをつなぐ(連結)ことは一般的にしません。
		
歯根膜が機能しなくなるとどうなるのか?
			天然歯の『歯根膜』は歯が動揺(動く)することによりその幅を維持しているのです。
			もし、天然歯が動揺しなかったら(動かなかったら)、『歯根膜』は機能が衰え、歯根膜の幅を減少するのです。
			そして機能が衰えた天然歯は『歯根膜』の厚みの分だけ沈み込みます。
			例えるとクッションのある靴がクッションを取り除いたような状態になることです。
			クッションの厚みの分だけ靴の高さが減少することと同じような状態です。
			インプラントと天然歯を連結した場合、インプラントにより天然歯は固定されてしまうため『歯根膜』の機能も衰え動揺しなくなったり、沈み込んだりする可能性があります。
			ただし、これは全ての症例において起ることではありません。
		
天然歯が動かなくなったり、沈下することは問題なのか?
			通常、天然歯においてブリッジ等の被せ物は『セメント』と言われる接着剤でくっつけます。
			インプラントと天然歯を連結した場合、先程書いたように天然歯の沈下が起ることがあります。
			天然歯が沈下するとインプラントと固定されている被せ物はそのままになるので天然歯と被せ物に隙間できることがあります。
			また先程、歯が動くことは『歯根膜』が噛む力によるダメージを調整しているということをお話しました。
			連結することにより動かなくなった天然歯は噛む力を直接受けることにより折れたり、割れたりする可能性があります。
		
ではインプラントと天然歯の連結は本当にできないのか?
			しかし、どうしても連結しなければならないことが稀ですが、あります。
			私自身年間約400本程度(インプラント実績参照)のインプラント埋入を行っていますが、今までに3症例のみインプラントと天然歯の連結を行っています。
			このような場合にはインプラントや天然歯に特別な装置を着けます。
			そうすることにより問題をある程度解決することができます。
			またインプラントと天然歯を連結し長期的に観察した論文報告はいくつかあります。
			いくつかの論文では大きな問題はないとされていますが、先程書きましたように特別な装置を装着する必要性があります。
		
特別な装置とはどのようなものか?
			まず天然歯と被せ物の間に緩衝材のようなものを着けます。
			『内冠』と言われる物です。
			これは天然歯に金属製の被せ物を行います。これは噛むようなものではなく単に削った天然歯を薄く覆うヘルメットのような被せ物です。ブリッジ等の最終的な被せ物はさらにこの上に装着することになります。
			天然歯と内冠は接着剤でしっかりと固定されます。もし、天然歯が沈下しても内冠とともに沈下しますので最終的な被せ物との間に隙間ができても虫歯になったりすることはありません。
			ただし、このようなことが起った場合、被せ物は天然歯と固定されないためインプラントのみに噛む力が加わることになります。
			次に天然歯とインプラントを連結する部分が完全に固定されていなく若干動くような装置を取り付ける方法があります。
			この装置をアタッチメントといいます。
			このアタッチメントを装着することによりかなり問題点は改善できますが、アタッチメントの費用はかなり高いものになります。ですから2歯欠損のような症例に対し、インプラントを2本埋入するより、1本を埋入し天然歯とブリッジすることの利点は治療費の面からみてもさほどないと考えられます。
			まとめますとインプラントと天然歯の連結は臨床的には可能だが利点はさほどなく適応とされるケースは非常に少ないのが現状です。