インプラントにおける難症例:10
 前回は『人工骨』の中の『ハイドロキシアパタイト』についてお話しました。
 今回は『リン酸三カルシウム(TCP)』についてです。
 『リン酸三カルシウム(TCP)』の正式名称は『Tricalcium phosphate』と言い、その組成はCa3(PO4)2で骨材料として使用されるものとしては2種類の変態があります。
 変態というのは組成が同じで結晶構造の異なる物質のことです。
 その一つがβ型であり、今回のテーマである『β-TCP』になります。
 もとはカルシウムのリン酸塩の粉末を加圧下、1000〜
 1300℃で焼成されたものです。
 『β-TCP』は歯科の臨床上小さな顆粒状態で使用されます。使用する用途により異なりますが、大きさはコマ粒より小さいものです。
 『β-TCP』自体が骨になるわけではありません。
 『β-TCP』が生体内に移植された後、周囲の骨の細胞(御自身の生体内で生きている骨の細胞です)が『β-TCP』に入り込み次第に骨に置き換わっていきます。
 『β-TCP』はその時吸収を起こします。
 『β-TCP』が少しずつ吸収し、骨に置き換わる過程を専門用語で
 『リモデリング』と言います。
 しかしどのような条件でも骨に置き換わるわけではありません。
 御自身の骨の細胞が生きていけるような状態でないといけません。
 例えばコップの中に血液を満たしたとします。
 骨の細胞はそのコップの中で生きることはできますが、コップの外に出ることはできませんし、コップの外で生きることはできません。
 生体内でも同じようなことが起きます。
 血液が充満しているような状況(血流の良い状況)では骨の細胞もいきいきしており、その結果、移植骨である『β-TCP』も骨に置き換わりやすいという環境になります。
 骨の表面に単に移植材『β-TCP』を置いても骨にはなりにくいため、骨表面からわざと出血を起こしやすいようにします。
 出血を起こすと移植した『β-TCP』は血液に被われることになります。
 血液の中には骨の増殖を促す細胞が含まれています。
 このようにわざと骨表面から出血を起こすことを『ディコルチケーション』と言います。
 『β-TCP』の吸収することが良い点です。
 しかし欠点として早く吸収しすぎてしまうと骨にはならないということです。
 『人工骨』は前回解説しました『ハイドロキシアパタイト』と今回の『β-TCP』で終了です。
 『人工骨』には他に硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、生体活性ガラスという材料がありますが、これらについては現在歯科臨床ではあまり使用されていないため省略させていただきます。
 なんだかわからない話ですみません。
 毎回難しい話ですが、もう何回かはこのシリーズです。
 シリーズ終了後、全体をまとめHP上でアップしたいと思います。
次回は『コンポジット移植材』についてです。
インプラントの大船駅北口歯科インプラントセンター