口腔内金属の除去方法

はじめに

金属アレルギーと診断された場合には、口腔内金属を撤去することになります。
しかし、この金属の撤去が大変なのです。
小さな詰め物、大きな金属の被せ物、ブリッジのような大きな物でもそうですが、接着剤で強固にくっついているため、取り外すことは非常に大変なのです。
被せ物のようなタイプは、切れ目を入れてから撤去することも多いですが、小さい金属製の詰め物であれば、そのまま削り取ってしまうこともあります。

この金属製の詰め物 や 被せ物を除去(撤去)する際に問題が起こります。
金属を口腔内で削ることで、多量の削りかす(削片)が飛び散ります。
削った金属片は、粘膜 や 歯肉、舌に付着するだけでなく、飲み込むこともあります。
こうしたことで、金属アレルギーの症状を悪化させることがあります。(フレアーアップ)

また、金属を削った削片は 非常に細かいため、イオン化しやすいことも問題です。
ただし、こうしたことで起こる症状(フレアーアップ)は、一時的なことであり、ほとんどの場合は心配いりません。
こうした口腔内金属を撤去する際の問題点を解決するために「ラバーダム」という装置を使用して金属を撤去します。

ラバーダム

ラバーダムは、ゴムのシートのことです。
このゴムのシートを歯につけて口腔内に金属の削片が飛び散らないようにします。
実際に模型を使用した参考例の写真で見てみましょう。

左側は奥から2番目の歯に作製した金属製の被せ物です。
この部分にラバーダムを装着したのが右側の写真です。
緑色の部分がゴム製でできた シート(ラバーダムシート)です。
治療対象となる歯が周囲の歯以外は、ゴムのシートの下(中)にして削った金属削片が口腔内に飛び散らないようにします。

ラバーダム

また、口腔内に見える金属だけが問題なのではありません。
歯科材料に含まれる金属成分は、金属製の詰め物 や 被せ物以外にも さまざまな材料で使用されています。
その一つが「コア」という土台です。
神経のない歯には、『土台』というものが装着されています。
専門用語で『コア』と言います。
神経のない歯は、まず『コア』を作製し、の上に『セラミック』等の被せ物を行うことになります。
それではコアについて実際にどのような物なのか見てみましょう。

コア

コアの説明をする前に虫歯が深い場合などで歯の神経を取る治療(抜随)についての説明から始めたいと思います。

下図1― aは、虫歯がない健康状態の歯です。
下図1−b は虫歯が大きく(深く)神経まで達した状態です。
虫歯が神経に触れていたり、虫歯により強い痛みが起こっている場合には神経を取る治療が必要になります。
神経を取り除く治療のことを『抜随』と言います。

下図1−c は、虫歯を削り取った時点で神経と接していたため、神経を取り除いた後の状態です。
歯は大きく削られているのが分かります。
このままでは 噛むこともできませんし、歯(差し歯)を作製することもできません。

コア

そこで 虫歯で削った部分を補うため と薄くなった歯を補強し、被せ物を作製するために、コアを作製します。

コア

下図3がコア(コア自体)です。
このコアはあくまでも『土台』であり、被せ物(差し歯)ではありません。
最終的な被せ物(差し歯)は、この『コア』を装着した後に型を取り装着します。

コア

以前の治療では、この『コア』の材質は金属が多く使用されてきました。
特に保険診療においては『銀合金』のコアが多用されてきました。 現在は、金属を使用しない「ファイバーコア」が使用されるようになっています。
以下の図は、コアを歯につけたところです。

コア

最終的な被せ物(差し歯)はコアを装着した後に型を取ります。
下図5になります。

コア

これで「コア」についてだいぶ分かったかと思います。
話は長くなりましたが、このコアが金属製である可能性があるのです。
特に だいぶ前に治療を行われた場合や保険診療の治療ではこの金属製のコアが使用されている可能性が高いです。
また、セラミックの被せ物を行っていたとしても、中の土台(コア)は金属製の可能性があります(可能性が高い)。
また、通常セラミックと言われる被せ物の素材は、オールセラミックのことではなく、見えない内部(内側)は金属製です。
一般的に言われるセラミックの日本語の名称は、陶材焼付金属冠(金属陶材焼付冠)と言います。
金属のフレームに瀬戸物を焼き付けて作製されているため、内部には金属が使用されているのです。

このように口腔内に使用されている金属は、口腔内から見える部分に存在するだけでなく、歯の中(金属製のコア)や セラミックの内部にも使用されているのです。
金属アレルギーに陽性反応があり、口腔内金属を撤去する場合には、こうした見えない部分の金属も全て撤去する必要性があるのです。