インプラントの傾斜埋入
3/26(木曜日)です。
前回までに 上顎の奥歯において、高度に骨吸収が起っている場合、
『上顎洞底挙上術(サイナスリフトリフト法)』を行う必要性があることを解説してきました。
具体的には、残っている骨の高さが5ミリ以下の場合、『上顎洞底挙上術(サイナスリフトリフト法)』が必要になってくる可能性が高いのです。
そして、『上顎洞底挙上術(サイナスリフトリフト法)』を行うためには、
骨移植が必要になってきます。
これが、大変なのです。
そして、『上顎洞底挙上術(サイナスリフトリフト法)』を避けるための一つの方法として、『上顎結節を利用したインプラントの傾斜埋入』があります。
これは、上顎の親知らずの さらに奥に存在している 骨の出っ張り部分 を利用し、
インプラントを埋入するというものです。
この親知らずの奥の骨の出っ張りを『上顎結節』と言います。
しかし、この『上顎結節』は、親知らずのさらに奥にあるので、
インプラントを埋入するためには、斜めに埋入することになります。
このため、『上顎結節を利用したインプラントの傾斜埋入』
と言うのです。
まず、『上顎結節を利用したインプラントの傾斜埋入』症例を見ていただきます。
下のレントゲン写真が治療前の状態です。
赤色の点線が上顎洞の位置で
緑色の点線が骨の外形です。
中央部には骨の高さがほとんどないことがわかります。
治療方法として サイナスリフトはせず、奥にインプラントを傾斜埋入させて行うことにしました。
同部分を拡大(抜歯前になります)したのが右側の写真です。
抜歯前の状態を見ると 骨が根の先までないのがわかります。
クリックすると拡大されます。
下のレントゲン写真が治療後の状態です。
このようにインプラントの傾斜埋入を行うと、サイナスリフトや骨の移植手術を行わないで治療を行えます。
しかし、インプラントを斜めに埋入する部位が存在しなければもちろん行えません。
左のレントゲン写真が全体像で右のレントゲン写真がインプラント部分のみの拡大像です。
クリックすると拡大されます。
それでは、『上顎結節を利用した傾斜埋入』の問題点は、あるのでしょうか?
まず、先程記載しましたように、上顎結節にインプラントを埋込むための 骨が存在する必要性があります。
上顎結節は、比較的吸収しにくく、親知らずにあたる部分の骨が吸収しても
上顎結節のみ骨が残っていることも多くあります。
しかし、中には、上顎結節の骨も吸収している方もいらっしゃいます。
また、上顎結節は、他の部位に比較して、
骨の硬さが軟らかい場合が多いのです。
一般的に、上顎と下顎の骨を比較すると、
上顎の骨の方が 圧倒的に柔ららかいのですが、上顎結節は、さらに軟らかい傾向が強いのです。
そのため、上顎結節にインプラントを埋入するためには、
事前に、CT撮影等で『骨密度』を計測することも有効です。
さらに、通常よりも長いインプラントを埋入したり、
太いインプラントを埋入することも有効な手段となります。
次に、斜めにインプラントを埋込むことには、問題はないのでしょうか?
インプラントを斜めに埋込むことには、問題はありません。
ただし、この場合には、複数のインプラントで連結することが前提になります。
埋込むインプラントが1本のみの場合には、斜めにインプラントを埋込むと場合により、
問題となることがあります。
しかし、複数のインプラントを埋入し、その1本が斜めであった場合には、
逆に維持力が増し、インプラントの生存率が高くなる
という論文も多く存在します。
次に、欠点としては、親知らずのさらに奥に埋入するため、
完成した被せ物は、かなり奥まで 歯が存在することになります。
このため、治療後には、歯ブラシが行いにくくなります。
ブラッシングがきちんとできない方には、適していない方法となります。
また、技術的にも難しい治療になります。
上顎結節の大きさは、結構狭いものなので、この部分に適切に
インプラントを埋込むことは、技術的には難しいのです。
ただし、骨の状態等の条件さえ合えば、『上顎洞底挙上術(サイナスリフトリフト法)』のように骨移植を行わないので、
患者様に対して、負担も少なく、治療期間も圧倒的に短くできます。
『上顎結節を利用したインプラントの傾斜埋入』は、上顎の奥歯において、骨吸収があり、インプラントが適切に行えない場合には、非常に有効な治療の一つになります。
次回のブログは3/30(月曜日)になります。
話が長くなってしまいましたので、今週のインプラント手術報告はお休みさせて頂きます。
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大船駅北口歯科インプラントセンターインプラント 歯周病 専門医
神奈川県横浜市にある 日本歯周病学会歯周病専門医 国際インプラント学会認定医の歯科医院
I.T.Iインプラント認定医でもあり、 GBR法 、 サイナスリフト、 審美インプラント等の難症例も行います。
HPでは 治療費(費用)の説明や インプラント症例、 無料相談コーナーもあります。