オベイド・ポンティック:審美的に治療を行うために…

はじめに

まず、『ポンティック』とはなんのことでしょうか?
『ポンティック』について説明する前にブリッジについて解説したいと思います。
ブリッジを理解するとポンティックは自然と分かってきます。
ブリッジとは歯のない部分に歯を作製する治療方法の一つです。

例えば、前歯が1歯欠損していたとします。
この場合の治療方法として

  • インプラント
  • 義歯
  • ブリッジ

が考えられます。
それぞれの特徴は以下のようになります。

1 インプラント

インプラントは欠損周囲の歯を削らず、欠損のみに人工の根(多くはチタン製)を埋め込むものです。
利点は、
治療のために周囲の健康な歯を削らない。
固定式のため違和感がない。
義歯(入れ歯)やブリッジのように他の歯に負担をかけない。
が挙げられます。

欠点として、
治療期間が長い(最短でも2ヶ月程度)。
手術を必要とする。
保険がきかない。
と言ったことが挙げられます。

2 義歯

義歯とは“入れ歯”のことです。
利点として治療のために周囲の健全な歯を削る必要性がない。
型を取れば、約1週間で完成するため、治療期間が短い。
麻酔もすることがない。
ほとんどの義歯は保険が適応される(全ての治療の中で最も安価)。

欠点として
取り外しのため、食後には取り外し、清掃が必要になる。
食事や会話中に取れたりする可能性がある。
プラスチック製のものが口の中に入るので、違和感が強い。
部分義歯の場合、義歯を安定させる金具がつき、審美性に問題がある。
義歯を固定する歯が歯周病等の場合、金具で支えている歯に負担がかかる。
等があります。
多くの方はこの義歯を希望しないのが現状です。

3 ブリッジ

ブリッジは欠損部の両側の歯を削り(全周約1~2ミリ程度削る)、欠損部を含めた被せ物を装着するものです。
利点として
固定式のため、義歯のように取り外すことがないため、違和感が少ない。
歯を削り、型を取れば、1週間程度で完成する。
欠点として
歯(ケースによっては健康な歯を)を削る必要性ある。
保険の場合、奥歯は金属製である。
ポンティックが存在するため、その形態により清掃性や発音に問題が生じる可能性がある。

ここで、ようやくポンティックがでてきましたね。
このポンティックについての詳細は後で解説しますので、ここでは上記の欠損部に対する3つの治療法について理解して下さい。

3つの治療法を図で解説

以下は、インプラント、義歯、ブリッジの比較写真です。

歯がない場合の治療法

ポンティックとは?

それでは、ポンティックについて解説します。
下の図にあるようにポンティックとは、歯がない部分にある人工の歯のことです。

ポンティック

ポンティックについてさらに詳しく

ポンティックは欠損部の歯肉の上に乗っかっているだけのものです。
当然、歯肉とくっついているわけではありません。
単に歯肉の上の乗っかっているだけなのです。
そのため、ポンティック部分には食事をすると多少の食物が溜まります。
通常これは、さほど気になることはありません。
(ちなみに私自身も前歯はブリッジになっており、ポンティックがありますが、食事中 特に気になることはありません…体験済みです。)
しかし、場合により、歯がない部分は時間の経過とともに痩せていく傾向があります。(歯肉が退縮してく)
これば、歯がないと噛む力が直接骨に加わらないため、骨が痩せてくる現象が起るためです。
この詳細はこちらを参考にして下さい。

ポンティック部分の歯肉が痩せてくるとその部分に食物が詰まりやすくなったりします。
また、審美的にも問題が出てきます。

それでは、一般的なポンティックの形について解説したいと思います。
一般的なポンティックの形態は以下のようになります。

1 鞍状型(あんじょうがた)

馬の鞍(くら)のように歯肉をまたぐように設定さています。
物が詰まりにくいのですが、逆に清掃性が難しいという欠点があります。

2 船底型(ふなぞこがた)

通常、下顎の奥歯に使用するタイプです。
船の底のような形をしているため、このような名前になっています。
清掃性に優れています。
しかし、上顎の前歯部にこの形態を採用した場合、発音に問題が生じやすいことがあります。

3 リッジラップ型

通常、上顎の前歯部に採用する形態です。
発音と清掃性を考慮すると優れた方法です。
しかし、歯肉に圧力が加わりにくいので、歯肉が痩せてくることがあります。
歯肉に圧力が加わるということは、その下にある骨にも圧力が加わるため、骨が吸収しにくいことがあります。
(全てのケースではありませんが…)この詳細については こちらを参考にして下さい。

ここまでで、ポンティックについてだいぶ お分かりになったと思います。
以下は上記説明の図になります。

従来のポンティック形態

オベイド・ポンティックとは?

ここまでで、ポンティックについてはお分かりになったかと思います。
オベイドとは、卵型を意味します。
オベイド・ポンティックとは、先程の鞍状型、船底型、リッジラップ型とは違った形態です。

ちょうど歯肉の上に卵を乗せたような形態です。
今までのポンティックの欠点を補うように、1980年代後半になり、新しく開発された形態です。
このオベイド・ポンティックが開発されて以来、前歯部等の審美性を追求する場所には高頻度で使用されています。 下図を参考にして下さい。

オベイド・ポンティック

オベイド・ポンティックの作製方法

このオベイド型のポンティックは今までのポンティックの作製方法とは大きく違う点があります。
今までのポンティックは、型を取り、歯科医師の指示のもと、ブリッジを作製する歯科技工師さんが形態を作製します。
つまり、ブリッジの作製段階(歯科技工段階)で決定するものなのです。
しかし、オベイドポンティックは、まったく違う行程で作製します。
一般的なオベイドポンティックは型を取る前に、歯肉を形態修正を行います。

歯肉の形態修正?
分かりやすく説明しますと歯肉に麻酔をし、歯肉を若干除去し、くぼみを人工的に作るのです。
くぼみができた歯肉の上に仮歯でできた卵形のポンティックを歯肉に当たるように設置します。
そして歯肉が治るまで、そのままの仮歯で過ごしていただきます。
2週間程度し、仮歯のブリッジを撤去すると歯肉は卵が置けるような形態になっています。
この状態を確認した上で型を取るのです。
通常のポンティックよりは手間と時間がかかります。

もう一つの方法として、歯肉の形態修正をまったくせず、ブリッジの型を取ります。
そして、型から作製した模型上で、先程行ったように模型の欠損部を削り、卵型にします。
つまり、口腔内では、麻酔をしたり、歯肉を削ったりせず、模型上でこの作業を行うのです。
そして出来上がったオベイド・ポンティック・ブリッジを仮歯を外して、装着するのです。
模型上で、削って作製してあるため、実際の歯肉とはすぐには合いません。
歯肉を若干押すようにしてブリッジを装着します。
ブリッジの装着時には時間が多少かかります。

この模型上でオベイド・ポンティック・ブリッジを作製する方法は簡単なのですが、実際に口腔内の歯肉を削らないので、オベイド形態にする量に限界があることと、オベイド・ポンティック・ブリッジを装着後に変化する歯肉の状態を予想しにくいことがあります。
きちんと行うためには、やはり、型を取る前の段階で、麻酔をし、歯肉の形態修正を行った方が良いでしょう。

オベイド・ポンティックの作製方法