インプラントと骨は本当に結合しているのか?

オッセオインテグレーション(osseointegration)

この話しはちょっとマニアックな話しです。
インプラントのことについてなんでも知りたいという方は御覧になって下さい。当医院のHPではよくインプラントを埋入してから骨と結合するまで上顎で3ヶ月、下顎で2ヶ月程度と書いてありますが、本当にインプラントと骨とは結合(くっつく)しているのでしょうか?
インプラントの素材は純チタン(99.9%以上のチタン)でできています。
チタンもそうですが、金属は空気に触れると表面が酸化します。酸化とは金属の表面が酸素を取り込むことにより変化(変性)することです。そしてこの変化(変性)した金属の表面を酸化膜と言います。酸化膜は本来の金属とは違う性質をもつことになります。この酸化膜は100万分の1ミリメートルという非常に薄いものです。
また酸化膜は酸素に触れるとどんどんと厚みを増していきます。これはインプラントを骨中埋入した後にも続きます。埋入後、生体の新陳代謝により作り出された酸基といわれるものにより酸化膜は厚みが増すとされています。
インプラントは組織学的には約8週で骨と結合すると言われていますが、インプラントと骨が結合した後も生体の反応により酸化膜は厚みをまし、さらに結合力は増します。
さらに酸化膜は生体とが様々な力によりくっついています。
その一つとして血液中の水分があげられます。
インプラントを埋入する際に骨中からの血液に酸化膜が触れると血液中の水分子は生体の分子を吸着させる作用をするため結合しやすい状態になります。
しかしインプラント手術中に血液以外の物に触れた場合には結合は妨げられます。
唾液や他の金属との接触です。唾液がインプラント体に付着すると結合は妨げられます。またインプラント本体にチタン以外の金属が触れることもダメです。
インプラント手術に使用する器具は全てチタンでできています。チタン以外の金属がインプラント表面に触れると他の金属片がインプラント表面に付着し、骨との接触と阻害してしまいます。チタン以外の金、鉄等は骨と結合しないからです。
万が一手術中にそのようなことが起った場合にはそのインプラントは使用できませんので新しいインプラントに変えます。
結構シビアなものなのです。
ちなみに私達はインプラントと骨との結合のことを『オッセオインテグレーション(osseointegration)』と言います。Osseoとは『骨の』、integrationとは『結合』を意味します。