『ステージドアプローチ』と『サイマルテイニアスアプローチ』

はじめに

インプラントの治療用語には非常に難しい名前があります。
その中でここでは『ステージドアプローチ』と『サイマルテイニアスアプローチ』についてお話します。
私達歯科医師がインプラント治療を行う際には非常に大切な用語です。

『ステージドアプローチ』、『サイマルテイニアスアプローチ』とは?

『ステージドアプローチ』と『サイマルテイニアスアプローチ』は『GBR法』において使用する用語です。
まず、『GBR法』とはインプラントを埋入するための骨の幅や高さが十分ない場合、骨の幅を増やす治療法のことです。
『GBR法』についてお分かりにならない患者様はこちらを先に御覧になって下さい。
『GBR法』には『インプラント埋入と同時に行うGBR法』と『あらかじめ(インプラント埋入前に)骨を増大させるGBR法』があります。
あらかじめ(インプラント埋入前に)に骨を増大させる方法を『GBR法』の中でも『ステージドアプローチ』と言います。
それに対しインプラント埋入と同時に行う『GBR法』を『サイマルテイニアスアプローチ』と言います。

どのように使い分けるのか?

使い分けですが、骨の幅が若干少ない程度であれば『サイマルテイニアスアプローチ』の方が患者さんにとっても1回で済みますので楽な治療方です。
しかし、大幅に骨がない場合には時間はかかりますが、『ステージドアプローチ』で骨を増大させた方が無難です。
一般的に『ステージドアプローチ』は骨を再生(増大)させるまで約3~4ヶ月かかります。
骨の再生(増大)を確認できた後インプラントを埋入することになります。
患者さんにとっては時間がかかり大変ですが、骨の幅や高さがない場合には有効な治療法です。

術者によりどちらを選択するかは違う!なぜ?

先程書きましたように『サイマルテイニアスアプローチ』はインプラントと同時にできますので、治療回数が少なく患者さんにとっても楽な治療法です。
それでは全て『サイマルテイニアスアプローチ』で行った方が良いということになります。
『ステージドアプローチ』や『サイマルテイニアスアプローチ』は症例にもよりますが、難易度が高い治療です。
誰にでも行える治療ではありません。
高い知識、技術、経験がない歯科医師が行うとトラブルが起ることもあります。
特に診断をあやまり、技術的にも未熟であるとインプラントと同時に行う『サイマルテイニアスアプローチ』では悲惨な結果となることがあります。
つまりインプラント自体が失敗するということです。
だからと言って『ステージドアプローチ』が簡単ということではありませんが、無理矢理1回で治療を終えようとすると失敗したら大変なことになるので、骨を十分作ってからインプラントを行う『ステージドアプローチ』のがインプラント経験の少ない歯科医師には無難な方法とも言えます。
ですからどちらの治療法を行うかは、骨がある、少ないという差以外にも術者の知識、技術、経験により違うのです。

どこまでが骨が少なく、どの状態が骨があるのか?

骨が少ない、多いというのはどう判断するかということですが、完全に明確な基準がありません。
多くの研究者によりその適応症や一定の基準は発表されていますが、臨床というのはまったく同じ症例は存在しないということと、先程書きました技術者の差があるため『どこまでが骨が少なく、どの状態が骨があるのか?』という基準を設定するのは困難です。(もちろんある一定の基準というものはあります)
インプラント治療を希望して歯科医院に何件か行かれた患者様は経験されたかもしれませんが、ある歯科医院では『骨がないからできない』と言われ、ある歯科医院に行ったら『大丈夫』と言われたということがあります。
インプラントを行うための骨が『ある』、『ない』といった基準はその歯科医師の知識、技術、経験によりだいぶ違うのです。

最後に私の診断基準です

私自身の診断基準はまず安全性を最優先にしていきたいと思います。そして次に患者様の負担です。
治療だけのことを考えるとどうしても治療が複雑になったり、期間がかかります。
治療回数(手術回数)が少ないということは非常に大きなメリットになります。
そのためできるかぎりインプラントの手術は少なくなる治療法を選択していきたいと思っています。
そのためインプラントの埋入方法も可能な限り1回法で行いたいと思っています。1回法と2回法についてはこちらを御覧になって下さい。 インプラントの手術方法(1回法と2回法の違い)

しかし、インプラント治療で一番難しい前歯部において『GBR法』を併用する場合には『ステージドアプローチ』や『2回法』を選択する可能性が高くなります。