骨吸収のため、インプラントができないと言われたら?

インプラントは、顎(骨)の中にチタンでできたネジのような物を埋込む治療です。
そのため、インプラントを埋込むための骨がしっかりしていないとインプラント治療は適切にできません。

通常 使用されるインプラントの太さ(直径)は、約4ミリです。
約4ミリの太さ(直径)のインプラントを埋込むためには、6ミリ程度の骨幅が必要です。
つまり、埋込んだインプラントの周囲に約1ミリ程度の骨幅が残っていることが必要なのです。
もし、骨幅が3ミリ程度しかなかった場合、直径4ミリのインプラントは骨の中にしっかりと埋込めないということになります。

それでは、このようなケースは、実際にどの程度存在するのでしょうか?
答えとしては、『半数以上は、骨幅が十分に存在しません!』つまり、6ミリ以下の骨幅しか存在しないのです。
骨幅が3ミリ以下という症例も多く存在します。
特に、前歯部は骨幅が少ない場合が多く、骨幅が2ミリ以下というケースも存在します。
骨の幅を増大(再生)させるための治療法には以下の方法があります。 骨再生法(GBR法)

また、問題となるのは、骨幅だけではありません。
骨の高さに問題が起ることもあります。
インプラントの長さには、長いものから、短いものまで存在します。
どちらのインプラントがより良いかと言いますと、『長いインプラント』です。
できるかぎり長いインプラントを埋込むことがインプラントの長期的な安定につながるのです。
しかし、骨の吸収が起っている場合には、適切な長さのインプラントを埋込むことができません。
適切な長さのインプラントとは、上下顎で違いますが、上顎では10ミリ以上、下顎では8ミリ以上の骨の高さが必要です。

しかし、インプラント治療を希望される方の多くは、歯周病や歯根破折、歯がない状態が長く続いた等により、骨吸収を起こしています。
歯周病や歯根破折については参考リンク「歯周病になると」、「歯の根が折れてしまったら」を参照ください。

特に上顎の奥歯では、骨の高さの吸収が起りやすく、歯が欠損した後では、骨の高さが10ミリ以上存在することの方が圧倒的に少ないのが現状です。
その大きな理由として、上顎の奥歯の上方には、『上顎洞』という空洞が存在するからです。
それでは、『上顎洞』について下図を見ながら簡単に説明します。

骨吸収のため、インプラントができないと言われたら?

上顎洞とは、上顎の奥歯の上に存在する骨の空洞になっている部分のことです。
この空洞は頬骨の奥に存在し、鼻腔へとつながっていて、鼻柱骨により左右に分かれています。
この上顎洞の働きは完全にはわかっていません。
多くの場合、歯が存在するとこの上顎洞と上顎の骨の距離は一定の幅がありますが、歯周病等で骨が吸収してしまうと上顎と上顎洞との距離が薄くなってしまいます。
その結果、インプラントができないこともあります。
骨の高さが少なくなってしまった場合には、以下のような治療を行いインプラントを埋入します。 ソケットリフト法 サイナスリフト法(上顎洞底挙上術)