自家歯牙移植 治療方法及び成功率

自家歯牙移植の治療方法及び成功率

自家歯牙移植の歴史は非常に古く、成功率も非常に高い治療法です。

以下(研究1、研究2)は自家歯牙移植の成功率についての報告です。
研究者によりその成功率は大きく異なります。これは何故なのでしょう?
自家歯牙移植が成功するかどうかはその適応床、術式、術後管理等自家歯牙移植に対する術者の知識が大きく影響されます。
きちんとした知識のもと治療が行われれば非常に成功率が高い治療法であることは多くの研究や報告から明らかにされています。

研究1:O.Schwartz 1985

1955~1980年までに自家歯牙移植された291本の歯牙の1~25.7年間(平均9.6年)の予後調査の結果その成功率は5年後で76.2%、10年後で59.6%であった。

研究2:J.O.Andreasen 1990

1973~1985年までに自家歯牙移植された370本の歯牙の1~13年間の予後調査の結果その成功率は平均98%であった。
それでは研究2のように成功率が高くなるにはどのようにすれば良いのでしょう。
実際の症例を通して見ていきましょう。

移植の成功率を高めるには

本当に抜歯した歯が移植をしても生着(骨とくっつく)するか

まずみなさんが自家歯牙移植の疑問点として本当に抜歯した歯が移植をしても生着(骨とくっつく)するかということかと思います。
骨の中に埋まっている歯の根は骨と直接くっついているのではなく“歯根膜”(図1参考)という膜が根の周囲を取り囲んでいます。

抜歯してもこの“歯根膜”が生きていればまず第一段階として移植は成功します。
しかし、抜歯時にこの歯根膜が 2mm以上傷ついてしまうと移植は成功しません。
そのため移植を行う歯自体の形態が大きく左右されます。
つまり図2のように歯の根が曲がっていたりする場合は抜歯時にうまく抜けずに歯根膜が傷ついてしまう可能性があります。

このようなことは術前にレントゲン等で想定できますし、もし抜歯時歯根膜が傷ついてしまった(2mm以上)場合は移植自体を中止する場合もあります。
歯の根が曲がっている場合、抜歯(矢印の方向に引抜く)を行うと曲った根が骨にぶつかり、歯根膜が傷ついてしまいます。
移植を行う歯としてはあまり条件の良い歯とは言えません。