自家歯牙移植症例

自家歯牙移植症例

症例

右下の奥歯に歯がない部分があります。
2本歯がないことになります。
さらに下に歯がないために噛み合う上の歯が下に落ちてきています。
食事も不自由なため一番奥に自家歯牙移植を行うことにしました。
他の治療方法としてインプラントも考えられましたが、ちょうど左側の上に抜歯する親知らずがあったために自家歯牙移植を選択しました。

(1)~(4):右下の欠損部の口腔内とそのレントゲン
(5)、(6):反対側の上顎に根の真直ぐな移植に適した親知らず(※)が存在します。虫歯もなく移植には非常に適しています。

移植をするための歯自体にも問題がないため移植の治療計画をたてることにしました。どこに移植を行うかシュミレーションを行います。(7) また下に落ちていた噛み合う歯はあらかじめ治療しておきます。(8)

虫歯がある場合はこの時点で治療をしておきます。
そして実際の治療に入ります。移植自体は30分程度で終了します。 まず抜歯を行います。
先に説明したとおり歯根膜をできる限り傷つけないように抜歯を行います。
次に問題となるのは抜歯した歯を移植するまでにどのように保存しておくかということです。
簡単に言えば抜歯した歯を空気中にそのまま放置しておくと歯根膜は損傷を受けてしまいます。
そこで抜歯した歯は (9)のように滅菌されたケースの中でガーゼの上に置き生理食塩水を入れ保管しておきます。
抜歯した歯を移植するまで保存する専用の液(10)もあります。

次に移植を行う側の準備をします。
簡単に言えば抜歯した歯(親知らず等)を入れる穴を掘ることです。
もっとも多いケースとしては虫歯などで抜歯しなければならない歯があった時にその歯を抜歯したと同時に親知らず等を抜歯した部位に移植する方法です。
こうしたケースは移植する場所を削る必要がほとんどないため患者さんにとって負担が少なく簡単なケースとなります。
移植後は安定をはかるために固定を行う場合もあります。
安静期間は約3週間です。

(11)、(12)は移植後固定を行った状態(移植後1週間)で(13)はそのレントゲン写真です。
移植を行った歯には神経がありますが、(神経がない歯を移植歯として使用することもあります)抜歯をすることにより歯の中の神経は死んでしまいます。
そのため移植後3週間の安静時期を待ち、死んでしまった神経を除去します。

(歯の根の中の治療)(14)は根の中の治療が終了した状態のレントゲンです。
そしてこの時期になると移植歯と骨との結合がある程度獲得されるため仮歯を作成し、噛めるようになります。(15)
(16)は観察期間を待ち最終的に被せもの(この場合はブリッジ)を行った状態です。