3DS除菌療法、治療手順および治療費

3DS除菌療法をお勧めする方

  • 虫歯が多い方
  • 詰め物被せ物が多い方
  • 歯磨きをしているのに虫歯になってしまう方
  • 妊娠予定や授乳中の方で子供を虫歯にしたくない方(母子感染防止)
  • 乳歯から永久歯への感染防止
  • 歯周病になりやすい方

3DS除菌療法(スリーディエス じょきんりょうほう)とは

Dental Drug Delivery System の略で3つのDの頭文字をとって 3DSと言います。
具体的には 患者さん個人に合わせたマウスピースを作製し、そのマウスピースの中に除菌効果の高い薬剤を入れて口腔内に装着することで、問題となる細菌を除菌し虫歯の原因となる歯垢の定着を集中的に抑える治療です。

3DS除菌治療の必要性~虫歯予防対策~

「毎日歯磨きをしているのに虫歯になってしまう!」
という方は多くいらっしゃるかと思います。
毎日歯磨きをしているのになぜ虫歯になるのでしょうか?
虫歯になりやすい人もいれば、虫歯になりにくい人もいます。
極端に言えば まったく歯を磨かなくても虫歯にならない人もいらっしゃいます。
歯磨きを行うことはもちろん非常に重要なことですが、歯磨きをしていれば虫歯にならない ということではありません。
虫歯のリスクの高い人は毎日歯磨きを行っていても虫歯になってしまいます。 虫歯のなりやすさにはさまざまな要因があります。

  • 虫歯細菌(細菌の種類、 量、 質 等)
  • 唾液の性状(分泌量、緩衝能、抗菌因子 等)
  • 糖分を含んだ食事 等生活習慣(間食の頻度 等)
  • 歯磨きの程度(適切なブラッシングができているか 等)
  • 歯質の問題(歯の耐性化、 石灰化度、フッ素の使用 等)

どれをとっても虫歯には重要な要因となっています。
歯磨きはさまざまな要因の一つでしかないのです。
虫歯となる原因のうち 細菌の 種類、質、量は大きく影響してきます。
3DS除菌治療は細菌をターゲットにした治療法です。
今までの虫歯治療は虫歯になった部分を削り取り除き、削った部分を覆うような詰め物をする方法でした。
3DS除菌治療は細菌自体を除菌する治療法なのです。

虫歯の成り立ち~虫歯はこうしてできる~

通常口腔内は中性に近い状態で維持されています。
食後 虫歯細菌は食物のショ糖を利用して酸を産生します。
この酸により口腔内は酸性に傾きます。
食後3分もすると酸の影響により歯質は溶け出します。
この状態を脱灰(だっかい)と言います。
しかし 食事中に分泌される唾液に含まれる重炭酸塩は、酸性に傾いたpHを中性に戻す働きがあります。
この状態を再石灰化(さいせっかいか)と言います。
虫歯が自己修復された状態です。
食事をするたびに、この脱灰(だっかい:虫歯)と再石灰化(さいせっかいか:自己修復)が繰り返されているのです。

3DS 除菌療法

脱灰の時間が多くなると虫歯になりやすく、再石灰化の時間が多くなると虫歯になりにくい状態と言えるのです。

3DS 除菌療法

間食が多いと 歯が脱灰(だっかい)する時間が長くなるため、歯はどんどんと溶けてしまいます。

3DS 除菌療法

3DS治療の流れ

ステップ:1 虫歯検査 歯周病検査 レントゲン検査 細菌検査

SALIVA-CHECK LAB  虫歯細菌DNA検査 : リアルタイムPCR法

細菌の遺伝子(DNA)から調べる検査方法です。
非常に精度の高い検査方法です。
細菌の種類、量等を詳細に調べることが可能です。
精密検査であり外注のため。1週間〜10日程度の検査期間がかかります。
また特殊な検査のため検査費用がかかることが欠点です
虫歯のリスクを知るためには非常に有効な検査方法と言えます。
検査する細菌は以下の3種類です。
ハイリスクの方が3DS除菌治療の対象となります

  • S.mutans菌
  • S.sobrinus菌
  • 乳酸桿菌
  • 検査費用 16,500円

簡易虫歯細菌検査 昭和薬品 RDテスト

RDテストは細菌検査ほどの精度はありませんが 非常に簡易的で結果もすぐに分かり、費用も格段に抑えられます。
検査方法はいたって簡単で だ液をレサズリンという指示薬が塗布されたシールにつけます。
そのシールを腕に貼って15分待ちます。
この15分間で培養されるので剥がしてシールの内側の色を確認すると、虫歯菌の数によって,Low(青色)→Middle(青紫色)→High(紅紫色)に変色します。
ハイリスクの方が3DS除菌治療の対象となります。

検査費用  500円
※虫歯検査の場合 リアルタイムPCR法 もしくは RDテストから1つを選択していだきます

SALIVA-CHECK LAB  歯周病細菌DNA検査 : リアルタイムPCR法

歯周ポケット内から採取した歯周病細菌のDNAから 以下の5種類の細菌を特定することができる非常に精度の高い外注検査方法です。

  • P.g.菌(P.gingivalis)
    慢性歯周炎の発症に関連が深い菌です。
    年齢に比較して骨吸収が大きくこの菌の比率が高い場合、侵襲性歯周炎と診断される非常に悪性度の強い細菌です。
  • A.a.菌(A.actinomycetemcomitans)
    若年者でも急速な進行を起こす侵襲性歯周炎の発症に関連が深い菌です。
    非常に悪性度の強い細菌です。
  • T.d.菌(T.denticola)
    スピロヘータというラセン状をした運動性のある細菌の仲間です。
    歯周病が進行すると組織の隙間に入って病状を急激に悪化させます。
    また免疫を抑制する成分を持っているため、この菌が爆発的に増えて いても 抗体が産生されないと言われています
  • T.f.菌(T.forsythia)
    紡錘状の形をした細菌です。
    P.g.菌 や T.d.菌 と共に検出されると歯周病のリスクが高くなります。
  • P.i.菌(P.intermedia)
    女性ホルモンによって発育が促進される細菌です。
    思春期性 や 妊娠性のホルモン関連性歯周炎を起こします ※5菌種検査が基本

検査費用
2菌種 11,000円
3菌種 16,500円
4菌種 22,000円

虫歯細菌リアルタイムPCR法検査結果 参考例
虫歯細菌リアルタイムPCR法検査結果 参考例

ステップ:2 虫歯 歯周病治療

虫歯治療や歯周病治療が完全に終了した後で除菌を行います。
虫歯細菌等が多量に存在する状態では除菌はできません。 (細菌が口腔内にいっぱいいるためです)
虫歯治療や歯周病治療は保険が適応されます

ステップ:3 PMTC

歯の表面にはバイオフィルムと言われるネバネバした細菌の集合体が存在します。
このバイオフィルムを徹底して除去することで、薬液の効果を高めます。
※ PMTC治療費 1回 5,500円

ステップ:4 3DS除菌 院内治療:1回目

PMTCにより歯がツルツルになったところで、オーダーメイドのマウスピースに高濃度の殺菌薬を入れて5分間除菌します。
※除菌当日は甘いものは禁止です。
使用する除菌薬は0.2%クロルへキシジン ジェルです。
マウスピースは事前に型取りが必要です。

※ マウスピース費用
上下顎 22,000円
※ 高濃度薬液費用1回分 550円

ステップ:5 3DS ホームケア

約1週間 ご自宅で毎日就寝前(歯磨き後)に、マウスピースに低濃度の殺菌薬を入れ 就寝時に装着していだきます。
これにより細菌を減少させます。
再感染を防ぐ為に歯ブラシは新しくして下さい。
使用する除菌薬はコンクール(低濃度クロルへキシジン ジェル)です。

※ 1箱 1,100円

ステップ:6 3DS除菌 院内治療:2回目

再度 PMTCを行いマウスピースに高濃度の殺菌薬を入れて5分間除菌します。
マウスピースは必ずご持参下さい。

※ PMTC治療費 1回 5,500円
※ 高濃度薬液費用1回分 550円

ステップ:7 細菌検査

再度細菌検査を行い除菌結果の判定を行います

  • 虫歯細菌リアルタイムPCR法検査費用 16,500円
  • 簡易虫歯細菌検査  RDテスト検査費用 550円
  • 歯周病細菌リアルタイムPCR法検査費用 11,000~22,000円

ステップ:8 定期管理とフッ素によるホームケア

虫歯や歯周病の原因は細菌だけではありません。
毎日の歯磨きや唾液の性状等さまざまな要因があります。
適切な管理ができないと細菌は元の状態に戻ってしまいます。
定期管理ではPMTCを行い、バイオフィルムを除去します。
また 毎日フッ素を使用することで耐虫歯性を高めます。
3DSホームケアは日常行っていただくことで効果が高まります。
ただし3DSホームケア前には徹底した歯磨きが必要です。
汚れが付着した状態では薬液の効果はありません。
特に歯間部の清掃は非常に重要になってきますので、歯間ブラシやデンタルフロスの使用が重要です。
※定期管理による歯石除去等については保険が適応されます。

3DSの除菌持続効果

それでは3DS除菌治療の効果はどれくらいあるのでしょうか?
3DSの持続効果については、生活習慣が適切に改善されれば半永久的にもちますが そうでない場合には1年程度で元の状態に戻ってしまいます。
虫歯も歯周病も細菌感染症ですがその背景には細菌的要因だけでなく、口腔清掃状態や食生活等の生活習慣が大きく関与していることは当然のことです。
そのため口腔衛生状態が悪かったり、食生活等の改善がない場合には3DSを行ったとしても細菌は戻ってしまいます。
3DSによる効果の持続を確認するためには、定期的に細菌検査を行うことと、PMTC後に高濃度薬液を使用した院内3DSを実施することが有効です。