金属治療の問題点その5:オールセラミックのまとめとコンポジットレジン治療

はじめに

第1項では 「1.なぜ 金属の詰め物は 取れるのか?」 ということを解説しました。
金属製の詰め物は、通常 セメントという素材で金属と歯をつけているのですが、 歯 や 金属としっかりとくっついているわけではなく、 口腔内の環境変化 や 噛み合わせ、金属の詰め物自体の熱膨張変化 等により 金属製の詰め物をくっつける際のセメントが崩壊することで、 セメントが溶け出し 虫歯になったり、詰め物が脱離します。 金属治療の問題点その1:なぜ金属の詰め物は取れるのか?

第2項では 「2.金属治療 問題点の改善方法」 ということを解説しました。
オールセラミック治療は、レジンセメントを使用することで 歯とセラミックがしっかりと強固に接着するので、脱離しにくく、虫歯にもなりにくい治療といえます。 金属治療の問題点その2:金属治療 問題点の改善方法

第3項では 「3.オールセラミック治療の問題点は?」 という内容で オールセラミック治療は、材質の性質上、破損する確率がある素材であり、保険が認められてない材質という欠点についても解説しました。 金属治療の問題点その3:オールセラミック治療の問題点は?

そして第4項では 「4.オールセラミック治療を成功に導くためのポイント」 について解説しました。 金属治療の問題点その4:オールセラミック治療の問題点および成功に導くためのポイント

他の項でも説明していますが、オールセラミックは歯としっかりとくっつけること(接着)で成功率が高くなります。
当医院で使用しているオールセラミックは、15年後の残存率を調べた臨床研究によれば、約93%と非常に高いデータがでています それでは、すべての虫歯治療でオールセラミックにすれば良いのかというと そうではありません。
噛み合わせの状態によっては金属製の方が良い場合もあります。
また、オールセラミックを作製するためには、 オールセラミック自体にある程度の厚み や 大きさが必要になります。
例えば、1ミリにも満たない厚みや大きさのセラミックを作製しても 割れる可能性があります。

もちろん1ミリにも満たない大きさのセラミック自体 作製することが難しいこともあります。
そのため、セラミックに厚みを保たせるために 歯自体を一定量削ることが必要になります。
これも欠点になります。
(ただし 使用するセラミックの種類により必要な厚みは異なります 近年では、薄いセラミックでも強度を十分にとれる材質もできています)

小さい虫歯の場合には、セラミック治療を行うために 必要以上の歯を削ることがあるため良くありません。
この場合には、虫歯の大きさや虫歯の部位、噛み合わせ等によって判断されることにはなりますが、虫歯が小さく、噛み合わせに問題がない場合、 無理にセラミックにせずともコンポジットレジン(以下CR)という樹脂で治療する方法もあります。

コンポジットレジン治療

CR治療は比較的治療方法は簡単です。

ステップ1

治療前(*印が治療部位)と*印の拡大

ステップ2

金属を除去する際に口腔内に金属片が飛び散らないように ゴムのシート(ラバーダム)で治療歯のみを見える状態にして 金属を除去し、虫歯も除去。

ステップ3

CRは始めは軟らかい状態であり、削った穴に充填し、 可視光線(かしこうせん)という光を当てることで 樹脂(CR)を固めます。

ステップ4

高さの調整をし、完了です。
簡単なケースであれば、1回の治療で20分程度で終了です。
健康保険が適応されます。

CR治療方法

CR(コンポジットレジン)は、1回の治療で完了しますし、保険も適応されます。
もちろん色は白いいため、審美的です。
しかし、CR(コンポジットレジン)には欠点もあります。

欠点1

強度が弱い セラミックと比較すると強度が弱いのが欠点です。
そのため、一般的には上下顎がしっかりと噛み合う部位には不適です。
通常は、前歯の歯の間 や 奥歯の上下顎が噛み合ない部分に使用することが多いです。
ただし、こうしたことは、噛み合わせ 等の状況によっても異なります。

欠点2

重合収縮を起こす コンポジットレジンは、使用前は軟らかい餅状 や ペースト状 です。
この流動性のあるCR(コンポジットレジン)を 歯を削った(虫歯を取った)部位に充填(流し込み)します。
そして、可視光線という光を当てることで強固に固まります。
この固まる過程で収縮を起こします。(重合収縮) この収縮率は、コンポジットレジン製造しているメーカーによっても 変わりますが、約2%です。
この重合収縮がCR(コンポジットレジン)の大きな欠点です。
2%の重合収縮を起こすということは、 虫歯で歯を削った穴が1ミリだとします。
この1ミリの穴にコンポジットレジンを充填し、固めたとします。
つまりCRは、約0.02ミリ収縮するということです。
0.02ミリは、20ミクロンです。
この隙間が歯とコンポジットレジンの境界部に生じた場合には、 細菌がそこから入り込み虫歯になりやすくなります。
口腔内細菌の大きさは、0.5~100ミクロンです。
そのため、小さい細菌にとっては、 20ミクロンという重合収縮で生じた隙間は、非常に大きな穴と言えます もちろん こうした話は、臨床的なことではなく、理論上の計算ですが…

また、重合収縮により他の問題も起こります。
現在の接着学は、非常に進化しており、 歯とコンポジットレジンは、非常に強固に接着します。
この歯と強固と接着したコンポジットレジンが重合収縮することで 問題が起こるのです。
先にコンポジットレジンは、固まる段階で約2%の収縮を起こすことを 解説しました。

この重合収縮で歯が引っ張られ、歯の一部に亀裂が入ることがあります。
この亀裂により、 治療後に歯がしみたり、 噛むことで痛みが生じたり、 亀裂が入った部分に飲食物が入り込み、 茶渋 等で黒っぽい線が生じたり、 白っぽく見えたりすることがあります。
特にこうした重合収縮による問題は、 一度に多量のコンポジットレジンを使用することで起こりやすくなります。

理論上は、 コンポジットレジンを1ミリ詰めれば、2%収縮するので 0.02ミリ歯に亀裂が入る可能性があります。
もし、一度に3ミリのコンポジットレジンを詰めれば、 0.06ミリ歯に亀裂が入る可能性があるということです。 これは、単に計算上のことですが…

そのため、CR(コンポジットレジン)治療を行う際には、 削った穴に 一度に多量のCRを詰めないように 少量づつ詰める(充填する)のが基本です。

欠点3

虫歯の大きさ や 治療部位によりCRを詰めるのが難しい場合がある CR(コンポジットレジン)治療は、治療を行う歯科医師の技術力に 大きく差がでる治療法です。
奥歯であったり、虫歯の大きさ や 部位によっては、 削った穴にCR(コンポジットレジン)をぴったりと詰めるのが難しいことがあります。
そのため、歯科医師の技術力に差がでてしまいやすいのです。

欠点4

変色が起こることがある CR(コンポジットレジン)の種類にもより大きく変わりますが、 セラミックと比較すると変色が起こりやすいのも事実です。

まとめ

CR(コンポジットレジン)は、セラミック治療と比較すると 治療回数が1回で終了しますし、 保険も適応される材質ですが、 虫歯が大きくなり、噛み合う歯と強くぶつかるような場合には セラミックを選択した方が良いですし、 削った穴が大きい場合には重合収縮による問題が起こりやすいので セラミックを選択した方が良いでしょう。

コンポジットレジン重合収縮の問題

削った穴が大きい場合、多量のCRを詰めることになります コンポジットレジンが重合収縮 削った面とCRが強固に接着しているため、歯質の方に亀裂が入る