最新インプラント症例:187回目

2012年 6月 6日(木曜日)です。
この最新インプラント症例ブログは毎週木曜日にアップしています。
『187回目のインプラント症例』になります。
朝から忙しく、アップが遅れました。
本日の症例は再アップケースです。
このブログでよく紹介する症例として
上顎の奥歯に骨吸収を起こしているケースがあります。
上顎の奥歯に骨吸収を起こすと インプラント治療が難しくなります。
その理由の一つには、上顎洞 という空洞の存在があるからです。
このブログを良く読まれている方はすでにご存知のことと思います。
本日の症例の話しを紹介する前に 骨吸収 と 上顎洞 という話しからしたいと思います。
これが分からないと今回の症例をご理解するのは難しいのです。
上顎の奥歯の上方には『上顎洞』という空洞があります。
上顎の奥歯の上に存在する骨の空洞になっている部分のことです。
多くの場合、歯が存在すると この上顎洞 と 上顎の骨の距離は一定の幅がありますが、
歯周病等で骨が吸収してしまうと 上顎 と 上顎洞との距離が薄くなってしまいます。
その結果インプラントを行えないことがあります。
以下は、上顎洞の図です。
p_img_01
A 歯がある状態で上顎洞までの距離があり、十分な骨の高さがある。
B 歯を失った後でも上顎洞までの距離があり、十分な骨高さがある。
インプラントを行うのに問題はない。
C 歯周病等で骨が吸収してしまったために上顎洞までの距離がなくなり、
インプラントを行うのに十分な骨の高さがない。
上顎にインプラントを希望する患者さんの多くは(60%以上)このような状態である。
このように歯を抜いた場所は年々やせて、場合によっては1〜2mm程度の幅しかない方もいます。
骨吸収と上顎洞の存在から上顎の奥歯には、
インプラントを埋入するための骨の高さが存在しないことが多いのです。
上顎の奥歯において、インプラントが安定するための必要な骨の高さは、
約10ミリ以上です。
これ以下であるとインプラントは安定しません。
そのため、10ミリ以下の場合 さまざまな治療方法を行いインプラントを埋入するのです。
ソケットリフト法
サイナスリフト法(上顎洞底挙上術)
と言われる治療方法がその代表的な治療方法です。
これらの方法は、上顎洞という空洞の中に骨(人工骨を含む)を移植する方法です。
ソケットリフト法 は 患者様の負担も少なく、比較的簡単な治療ですが、
サイナスリフト法(上顎洞底挙上術) は、かなり大変な治療になりますので、できれば避けたい治療です。
上顎の奥歯において、骨の高さが5ミリ程度あれば、ソケットリフト法 で対応が可能です。
しかし、5ミリ以下(状況により3ミリ程度あればOK)の場合には、骨移植を伴う 大変な サイナスリフト法(上顎洞底挙上術) を行うことが必要です。
患者様にとっては、できるかぎり大変な治療は避けたいものです。
そのため、骨吸収が大きい部位には、インプラントを埋入しないで治療を行う方法もあります。
こうした方法は、
カンチレバー
インプラントの傾斜埋入
という治療方法です。
私自身の考えとして、骨移植を伴う 大変な サイナスリフト法(上顎洞底挙上術) は最終手段であり、可能なかぎり 負担の少ない治療法を行いたいと思います。
このブログでも
ソケットリフト法
サイナスリフト法(上顎洞底挙上術)
カンチレバー
インプラントの傾斜埋入
といった症例を何度もご紹介してきました。
前置きが長くなりましたが、本日の症例になります。
10年以上前の症例になりますので、以前の症例です。
初診のレントゲンは古いものですので、写りが悪いですが…
以下が初診時になります。
初診時上顎は歯が1本もありませんでした。
下の歯もグラグラしていました。
スライド01
患者様は、義歯に抵抗があり、なんとか義歯でない治療方法をご希望されて当医院を来院されました。
いつものように 骨吸収の状態を分かりやすくするために
骨吸収の状態を線で書いたのが以下のレントゲンになります。
青線が骨吸収を起こす前の骨の位置です。
赤線は、現在の骨の位置です。
スライド02
さらに分かりやすくするために 骨吸収部位を赤色の領域で表しします。
スライド03
骨の吸収が非常に進行しているのが分かるかと思います。
次に本日の最初にも解説しました上顎洞です。
以下の緑線は上顎洞という空洞です。
緑線の内側は空洞なのです。
骨ではありません。
ただの 穴 です。
スライド04
これも さらに分かりやすくするために、上顎洞 を緑色で表示します。
スライド05
上顎の奥歯では、インプラントを埋入するための骨の高さがほとんどないことが分かると思います。
具体的には、上顎の右側では骨の高さが1〜3ミリ程度、
上顎の左側では骨の高さが1〜2ミリ程度しか存在しません。
この状態では とてもインプラントを行うことはできません。
スライド06
また、下顎にも大きな問題が起こっていました。
これも同様に骨吸収の状態を線で書いてみます。
スライド07
さらに分かりやすくするために 骨吸収部位を赤色の領域で表します。
スライド08
下顎も大変な骨吸収です。
歯周病専門医 でなければ、全て抜歯してもおかしくないケースです。
下顎右側の奥歯だけは抜歯になりました。
スライド09
後で治療終了後 のレントゲン写真もでてききますが、
現在でも下顎はまったく問題なく維持されています。
徹底した歯周病治療 と患者様の維持管理、メインテナンス(定期検査) が行われれば、このような重度歯周病であっても維持できる可能性はあるのです。
さて、このように上顎の奥歯に骨吸収が高度に起こっている場合には、
どのように治療を進めれば良いのでしょうか?
スライド10
理想的には、上顎の奥歯に骨移植サイナスリフト法(上顎洞底挙上術) を行ってからインプラントを埋入することです。
スライド11
スライド12
しかし、この方法であるとさまざまな問題がでてきます。
1.骨移植の費用やインプラントの本数も増えるため、治療費が高額になる!
2.骨移植に伴う腫れが起こり、患者様の負担が増える!
3.骨移植には非常に長い治療期間がかかる!
そのため、サイナスリフト法(上顎洞底挙上術) を行うかどうかは、
患者様のご希望にもよります。
スライド13
また、下顎の問題も考えなければいけません。
スライド14
上顎だけを考えて治療を行っても
噛み合う下顎の歯がダメになった場合にどうするのか?
ということも考えなければいけません。
患者様のご希望は、
1.上顎は、大変な骨移植は避けたい!
2.しかし、上顎は固定式のインプラントにしたい!
3.治療費は最小限にしたい!
4.治療期間も長くかかるのは避けたい!
5.下顎は、義歯を使用しても違和感がさほどないので、義歯でも良い!
といったことから最終的なインプラントの治療計画は以下のようになりました。
スライド15
骨移植を伴うサイナスリフト法(上顎洞底挙上術) は行わずに、
比較的簡単なソケットリフト法 を行い、
骨の高さがほとんどない部分には、インプラントを埋入せずにカンチレバー という方法で対応しました。
スライド16
下顎の右側は義歯で対応し、
残った下顎の歯は徹底した 歯周病治療 を行いました。
スライド17
以下のレントゲンは、現在の状態です。
スライド18
現在は、患者様の徹底した歯磨き や 適正な生活習慣を行うとともに
毎回必ずメインテナンス(定期検査) に来院されています。
その結果、下顎の歯周病状態ともに問題はなく、良い状態を維持できています。
治療方法といのは、必ず決まった治療になるわけではありません。
患者様の口腔内の状態、
ご希望
等を考え、最終的な治療計画が決まるのです。
治療費
上記の症例をインプラントモニターで行った場合の治療費は以下になります。
インプラント   1本  168.000円(消費税込)
被せ物(白い歯) 1歯  105.000円(消費税込)〜
になります。
治療費をさらに抑える方法として 被せ物を金属製にする方法があります。
金属製の被せ物は、1歯 73.500円(消費税込)になります。
当医院のインプラント治療費用の中には、
治療中のレントゲン撮影や薬代、
土台(アバットメント) の費用、
仮歯 の費用、
治療経過のレントゲン撮影、
セラミック等の被せ物の費用、
スプリッティング法(リッジエクスパンジョン法)
OAM(大口式)インプラントシステム
GBR法(骨増大法:インプラント埋入と同時の場合)
ソケットリフト法 の費用、
静脈内鎮静法(眠っている間に終了します) の費用も含まれています。
治療計画以上の追加費用はありません。
全て含まれた費用です。
次回のインプラント症例ブログは、6月20日(木)になります。
6月13日(木)は、学術セミナー参加のため、
ブログは休ませていただきます。
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神奈川県横浜市にある 日本歯周病学会歯周病専門医 国際インプラント学会認定医の歯科医院
I.T.Iインプラント認定医でもあり、 GBR法 サイナスリフト 審美インプラント等の難症例も行います。
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