インプラント治療
インプラントの失敗原因
成功の影に隠された失敗例を知る
			1950年にスウェーデンの科学者ペル・イングウァール・ブローネマルク博士によって発明されたインプラント。
			1965年に臨床に応用されてから、約60万人(2000年現在)がインプラント治療を受けているとされています。
			その後多くの研究機関でインプラントの研究がされてきました。
			I.T.Iインプラントでは1999年に骨との結合期間を大幅に短縮する“SLA表面インプラント”を開発しました。(詳細は下記参考リンク「治療期間の短縮」を参照)
			その後、抜歯と同時に埋入することを目的とした『TIT TE(R)インプラント』を2003年に開発しました。(詳細は下記参考リンク「抜歯即時インプラント」を参照)
		
			現在のインプラントはほぼ完成されたといってよいでしょう。SLA表面インプラント、TEインプラントを除外したデータでもインプラントの成功率は96%(10年以上経過した段階のデータ)と報告されています。
			今後、SLA表面インプラント、TEインプラントの10年後のデータが蓄積された時にはさらに高い成功率が報告されるでしょう。
			インプラントの成功率は非常に高いものです。
		
しかし、失敗もあります。 この項では失敗の原因を説明したいと思います。
埋入したインプラントが数日から数週間以内に脱落する
			まず細菌による感染が考えられます。
			インプラント治療時における感染については下記参考リンクを御覧になって下さい。
			次にインプラントを埋入する時に骨の穴を掘る器具の不適切な使用や注水不足による加熱(骨のオーバーヒート:下記参考リンク「手術中の水はしょっぱい、冷たい!」参照)も考えられます。
			また、骨が硬い場合にも起こります。
			硬い骨は血液の循環が悪いため、治癒不全を起こし、脱落します。
			このような場合は再度インプラントの埋入が必要になります。
			感染については下記参考リンク、「歯周病患者さんにインプラントは可能か」を参考にして下さい。
		
埋入後数ヶ月してグラグラする
			インプラントと骨が結合しなかったと考えられます。
			原因としては、インプラント埋入のための骨幅がはじめから少なかったことが考えられます。
			診断のミスが原因です。
			再度行うためにはGBR法(下記参考リンク参照)を行い骨の再生をしてからになります。
		
			次にインプラントと骨が結合するまでの安静期間に過剰な負荷(圧力)がかかり、骨と結合しなかったことが考えられます。
			これは義歯を使用している時に起こることが多く、義歯とインプラントが強く接触しすぎているためです。
			対処法として早期に義歯とのぶつかりを除けば、グラグラは回復する場合があります。
		
			それでも無理な場合には再度インプラントを行うことになります。
			インプラントがダメになる原因の詳細については下記参考リンクを御覧下さい。
		
			細菌の感染も考えられます。
			細菌の感染については常に口腔内を清潔に保つことと、消毒薬を使用することで防止できます。
			詳細は下記参考リンク「お手入れの仕方」および「インプラント治療における滅菌」、「インプラント手術における感染予防」を参考にして下さい。
		
下顎に埋入後、口唇等にしびれがある
			下顎の顎の中には下歯槽神経という太い神経が存在します。インプラントを埋入の際に同部を傷つけたり、圧迫されたりしたことが原因と考えられます。
			完全に神経が切断されていない限り、ほぼ回復します。
			治るまで1~3ヶ月程度かかります。
			場合によっては何年もかかることもあります。
			治りを促進させるためにビタミン剤等を処方することもあります。
			このようなことにならないためには的確な診査が重要です。
			診査についてはコンピュータによる最先端インプラントシュミレーションソフトを参考にして下さい。
		
噛み合わせ(被せ物や歯軋りに対すること)による問題
			インプラントは非常に成功率の高い治療ですが、けして100%ではありません。
			どのような歯科治療もそうですが、一度治療した部位が一生何ごともなく保つことは難しいことです。
			例えば被せ物はその形態を一生保たせることは不可能です。
			毎日噛むことにより被せ物は必ず磨り減るのです。
			もちろん噛む力には個人差はありますし、歯軋りの有無や程度によっても違いますが、必ず少しずつ磨り減ります。
			靴に例えると毎日使用していれば靴底は磨り減ります。
			磨り減り方には個人差があり、踵の部分が磨り減ったり、内側のみ、外側のみ、右側、左側と磨り減ったりします。
			口腔内も同様に右で良く噛む人は右側が磨り減ったりします。
			また歯軋りやくいしばりがある方は磨り減り方が大きいものです。
		
			ですから被せ物は消耗品です。
			20歳でセラミックをした人はその形態が60年、70年と不変であることはありません。
			噛む力によってはセラミックに日々負担がかかり、かけたりする場合もあります。
			特にインプラントは天然歯と違い歯根膜というクッションのようなものが存在しないため噛んでも動かない(沈み込まない)ので噛む力が直接インプラントの被せ物にかかります。
			被せ物を装着した時にはそうなならいように噛み合わせの調節を行いますが、時間の経過とともに噛み合わせは変化し、インプラント部に負担がかかってくることがあります。
			こうしたことを少しでも防止するためには被せ物を金属性の物にすることが考えられます。
			金属製の被せ物は見た目にはよくないですが、かけたりすることはありません。
			磨り減り方も少なくインプラントの被せ物としては有効なものです。
			このような噛み合わせの変化は定期検査でみていくことが大切です。
		
			次に『歯軋り』や『くいしばり』による問題です。
			私達がインプラントを行う際に最も注意するケースです。
			先程インプラントには天然歯と違い歯根膜というクッションが存在しないために噛む力が直接加わるという話しをしました。
			『歯軋り』や『くいしばり』がある方はこうした力をさらに受けやすいのです。
			こうした傾向が強い方にはインプラントをお勧めしないこともあります。
			(歯軋りを強くしている方は歯を見ると削れている状態が認められます。また歯軋りで天然歯がダメになった場合にはインプラントを行ってもダメになる可能性があります)
			『歯軋り』や『くいしばり』の防止策として『ナイトガード』といわれるマウスピースのようなものを夜間装着していただきます。
		
参考資料として下記リンク、「インプラントと天然歯の違い」および「『インプラントと天然歯』食べた時の違い」、「『歯ぎしり』はインプラントをダメにする!」を御覧下さい。